東京・恵比寿にあるスタイリッシュな中華料理店に来ている。白いテーブルを挟んで向かい合っているのは、医療関係の専門職である三宅祥子さん(仮名、37歳)。細身で、はっきりとした目鼻立ちをしていて、独特のペースで話す美人だ。平日のランチタイムなので、生後5カ月の娘は保育園に預けられたという。
夫の和也さん(仮名、41歳)と出会ったのは、婚活に疲れて「結婚をせずに生きていこう」と思い始めていた頃だ。祥子さんの「面倒くさい性格」のせいで一度は別れ話になりながらも2年前に結婚。今では穏やかで前向きな生活を送っている。やや浮世離れしたお嬢様っぽい雰囲気を漂わせる祥子さんの過去から振り返ってみたい。
結婚前の「腰かけ」のつもりだった就職
地方の裕福な家庭で育った祥子さん。両親の意向に従って医療系の大学に通い、現在の専門職に就くが、結婚前の「腰かけ」のつもりだったと振り返る。
「とにかく恋愛がいちばん! 自称ロックスター候補の男性と付き合ったり、失恋して体調を崩したりしていました」
そんな祥子さんを仕事好きに変えたのは、就職先の病院で知り合った1歳上の潤さん(仮名)だった。恋愛体質の祥子さんは器用で親切な先輩である潤さんにすぐにほれ込み、交際がスタートした。同棲を始めると、家でも勉強をしている努力家の潤さんがつねにそばにいる。恋人の影響を受けやすい祥子さんは触発され、「私も仕事ができるようになりたい!」と仕事に打ち込み始める。
熱心に働くようになると、職場のほかの先輩たちの対応も変わった。仕事を教えてもらい、できなかったことができるようになる楽しさを知った。「2年で辞める」と自他ともに思っていた病院に12年間も在籍することになる。
その途中で潤さんと結婚し、幸せな家庭を築いていれば、祥子さんは本連載には登場していない。しかし、仕事面でも自信がつき、出会いの機会にも恵まれていた20代半ばの祥子さんには「傲慢さ」が出てきてしまった。
「元カレとメールをやり取りしたのを見られたりして、彼とのケンカが多くなりました。束縛されるのが面倒くさくなったんです」
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