37歳「元・傲慢なお嬢様」が改心し掴んだ幸せ 調子に乗った20代、闇の婚活時代を経て…

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しかし、和也さんとの交際は順調とは言えなかった。誠実で優しい和也さんに祥子さんは甘え、「振り回すことで愛情を試す気質」を発揮してしまったのだ。

「別れたいと口では言いつつ、彼からは『別れたくない』と言ってほしいんです。私と結婚したいという男性がほかにも出てきたこともあって……」

祥子さんは、結婚相談所の所長だけでなく初対面の有名占い師からも罵倒されたことを思い出す。運勢を占ってもらいに行ったのに、「そんなことよりまず性格を直せ。あなたは傲慢だ」とズバリ指摘されたのだ。それは言いすぎだと筆者は思うが、祥子さんの「やや天然」な雰囲気に身勝手さが加わると、周囲の女性をいら立たせ、身近な男性を疲れさせることはあるかもしれない。

彼女には美質もある。素直でガッツがあることだ。和也さんに愛想を尽かされ、彼の気持ちが離れていくことを自覚したとき、呼吸することさえ苦しかったのに仕事には手を抜かなかった。

一人でもちゃんと生きていける

「職場で平然と振る舞えていることに気づいて、なんだか笑えてきました。支えてくれる男性がいないと私はダメだと思っていたけれど、意外と一人でもちゃんと生きていけるんです」

さっぱりとした気持ちで和也さんに会った。「今までありがとう」と感謝しながら別れるつもりだった。すると、和也さんが「やり直そう」と言ってくれたのだ。真っ直ぐに祥子さんを見てきた彼は、「人がこんなに変われるなんてすごい」と驚いたらしい。一人になる決意を固めると、人は急激に成長できるのかもしれない。

よりを戻してからは、祥子さんは和也さんの愛情を試すようなことはしなくなった。将来ではなく、今ここで一緒に過ごすことが大事だと思える。

「彼は私の一部ではなく、大切な別の人間なんだと初めてわかったんです。だから、彼を困らせるのではなく喜ばせることがうれしい。こんな当たり前のことをこの年齢でわかるなんて恥ずかしいけれど……」

和也さんもかつての離婚経験で「当たり前のこと」を学んだ人なのかもしれない。結婚してからも祥子さんを尊重し、仕事と子育てをしながらの大学院進学にも賛成してくれた。

「結婚して、何でも共有できる人がいると、楽しさは倍になるしつらさは半分になるって本当ですね。帰る場所があるからゆとりが生まれます。世間からズレてしまいがちな私を客観視して応援してくれるんです。彼が存在してくれること自体に感謝です。娘を産むのは大変な経験で、出血多量でダウンしてしまって、産後1カ月間は車いす生活でした。でも、今は風邪もひかずに保育園に通ってくれています。おかげで私はこうしてランチができるんです。元気な娘にも感謝しています」

身近にいてくれる他者に感謝できることは幸せな結婚生活を送る秘訣なのだと思う。その前提には、「配偶者や子どもは私の一部ではなく、大切な別の人間だ」という認識が必要だ。祥子さんの場合、「闇の婚活時代」の苦労と仕事への情熱、一人になる決意によって、ようやくこの認識をつかむことができた。

人の性格や気質は変わらない。でも、経験と努力によって「傲慢さ」を抑え、自信と自立によって素直さや感謝の心を伸ばすことはできる。祥子さんの人生は今後、穏やかに豊かに過ぎていくに違いない。

大宮 冬洋 ライター

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おおみや とうよう / Toyo Omiya

1976年埼玉県生まれ。一橋大学法学部卒業後、ファーストリテイリングに入社するがわずか1年で退社。編集プロダクション勤務を経て、2002年よりフリーライター。著書に『30代未婚男』(共著、NHK出版)、『バブルの遺言』(廣済堂出版)、『あした会社がなくなっても生きていく12の知恵』『私たち「ユニクロ154番店」で働いていました。』(ともに、ぱる出版)、『人は死ぬまで結婚できる 晩婚時代の幸せのつかみ方』 (講談社+α新書)など。

読者の方々との交流イベント「スナック大宮」を東京や愛知で毎月開催。http://omiyatoyo.com/

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