突然子どもに会えなくなる「虚偽DV」の悲劇 これまでは制度欠陥が「悪用」されてきた
仕事から帰ってくると、妻と子がいない。突然のことに呆然としているうちに、離婚調停を求める書類が届く。妻と子の消息をたどるために役所に行くと、住所がブロックされ消息がわからなくなっていた――。
結婚したカップルのうち3分の1が離婚する現代。こうした話は珍しくない。典型的なのが、住民基本台帳事務におけるDV等支援措置(以下、DV等支援措置)を使っての親子引き離しである。
この措置は本来、DV加害者がDV被害者の居所を探索することを防止し、被害者保護を図るためのもの。いったんこの措置が取られると、管轄の市区町村が“被害者”の住民票や戸籍をブロックする。そのため加害者は被害者の消息を追えなくなる。
被害者の申し立ての真偽や、身の危険が本当に及ぶのかという緊急性についてはほとんど考慮されない。加害者による異議の申し立てを受け付けることもない。虚偽であったとしても“被害者”として虚偽申告した者に対して何の罰則もない。
離婚紛争においてこうした制度の欠陥を“悪用”し、面会交流を妨害するケースが後を絶たず、減る兆しはこれまでまるでなかった。
そうした中、今年4月、名古屋地方裁判所でこれまでになかった判決が下された。
「虚偽DV見逃しは違法 妻と愛知県に異例の賠償命令 名古屋地裁 支援悪用、父子関係絶つ」(5月8日付産経新聞)
記事の内容は次のとおり。
DVの話を警察官が鵜呑みにした結果、不当にDV加害者と認定され子どもに会えなくなってしまったと夫側は主張、妻と県に損害賠償を求めた。名古屋地裁は夫の主張を認め、妻と県に55万円の賠償を命じる判決を下した。
ニュースを知って私は驚いた。措置によって子どもと会えなくなったという話は当事者の口から何度も聞いてきた。しかし、こんな形で「DV加害者」の主張が認められる判決は一度も聞いたことがなかったからだ。
詳細を知りたいと思った私は、名古屋へ行き、双方の代理人と父親に話を聞いた。
帰ってきたら妻と娘がいなかった
「夜、仕事から帰ってきたら家の中が真っ暗でした。ガランとしていて、妻と娘は家にいない。その日の夜はショックで一睡もできませんでした。仕事に行っても集中することが全然できなくてミスばかり。突然、涙があふれてくることも当時はありました。別居の4日前には、妻の希望で2泊3日の家族旅行を楽しんだ直後のことでした。今考えると、計画的な行動だったのではないかと、妻の行動に恐怖さえ感じています」
そう話すのは公務員の佐久間利幸さん(40代、仮名)である。
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