突然子どもに会えなくなる「虚偽DV」の悲劇 これまでは制度欠陥が「悪用」されてきた

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2018年4月、名古屋地裁の福田千恵子裁判長は利幸さん側の損害賠償請求に対し、広子さんによるDV等支援措置の目的外使用を認定した。また愛知県に対してもDV支援措置の要件を満たすか否かの通常尽くすべき調査義務を尽くしていないとして違法性を認め、広子さんと県に対し請求した金額330万円のうち55万円の支払いを命じたのだった。

妻とその代理人の主張

妻の広子さんやその代理人は、どのようなことを主張しているのだろうか。2012年から広子さんの代理人を務める可児(かに)康則弁護士に話を聞いた。損害賠償を求められたとき、何を主張したのか。

「まず申し上げたいのは、広子さんが支援措置の申し立てを行ったことは違法ではない、ということです。同居中に彼女は身体的暴力を複数回、暴言は日常的に受けていました(被害者要件)。そのことから別居後3年経っても、利幸さんに対する恐怖や不安感をぬぐえずにいました(危険性要件)。DV等支援措置が取られる要件(被害者・危険性要件)はどちらとも満たしていたんです」(可児弁護士)

2014年5月、宿泊付きの面会を含む月2回の面会や学校行事への参加などという条件で取り決めが行われた。しかし2016年2月、静香ちゃんの主治医から『当面、面会(直接)交流は控えるべき』という意見書が出た。「3月に広子さんがDV等支援措置を申し立てた時点で、利幸さんの面会交流や学校行事への参加は子の福祉の観点から認められない状況にあったと考えます。広子さんは住民票を移していません。だから支援措置がかかっているかどうかは別として母子の住所を利幸さんが知ることはできません」(可児弁護士)。

行方不明者届の不受理届を出すため広子さんは警察署に行った。理由は、静香ちゃんの学校行事に夫の利幸さんが参加することに静香ちゃんが拒否的な反応を示したこと、夫に知られた住所で暮らすことに母子ともに限界を感じ、引っ越すことにしたからだという。

「警察に転居のことなどを話し、行方不明者届の不受理届の提出をお願いしたところ、担当の警察官から『支援措置を使ったほうがいいですよ』と親身なアドバイスをもらいました。それを受け、彼女は警察に備え付けてあった支援措置の申出書をもらって、必要事項を書き、警察に意見をもらったうえで、市役所に提出しました。このとき警察のアドバイスがなければ広子さんが支援措置を申し立てることはなかったと考えています」(可児弁護士)

支援措置に加害者の主張が考慮されていない現状について、可児弁護士はどう考えるのか。

「この依頼者に限らず、一般的にDV被害者は、恐怖や不安を感じているということを理解していただきたいと思っています。第三者からすると『それほどでもないんじゃないか』と思うことはあるかもしれませんが、本人は、言い知れぬ恐怖や不安を抱いているのです。

今後、被害者が支援措置を申し出るとき、『危ないかどうかは自分できちっと判断しないと後で責任を問われる可能性が出てきます』と言われたり、今回のように後で損害賠償が普通に認められたりしたら、ただでさえ恐怖や不安を持つ被害者は、怖くて、誰も、支援措置の申し出ができなくなってしまいます」(可児弁護士)

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