ペットの病気、「安楽死」というタブーの真実 言葉自体タブーかもしれないが選択肢はある

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沖山先生の印象では、治療においておカネのことを切り出すのが苦手なのは日本人特有な性質らしい。これは飼い主にも獣医にも言える。

「たとえば欧米人は、最初にちゃんとおカネの話をしますね。いくらまでなら治療する、それ以上なら治療しない、獣医と意見が合わなければ病院を替える、と非常にはっきりしている。

日本人もおカネのことは絶対に聞くべきだと思います。それは恥ずかしいことじゃないですから。2000~3000円で済む話じゃないですからね。大変な額のおカネがかかる場合も多いです。おカネのことを聞かずに治療をはじめて『いったいいくらかかるのだろう?』と考えること自体、すごいストレスですよ」

ペットが危篤な状態になっても、おカネを積めばある程度生かし続けることはできるという。もちろんかなり高額な治療費がかかる。

安楽死という選択肢

もう元気になる望みがない状態である場合、飼い主には『ペットを安楽死させる』という選択肢がある。

『やさしい猫の看取りかた』(角川春樹事務所)(筆者撮影)

安楽死についても、日本人は切り出すのが苦手だという。この問題も、飼い主側も獣医側も苦手だ。

「日本では安楽死させる人は圧倒的に少ないですね。逆に欧米では飼っている時は家族のように大事にしますが、重篤な病気にかかった場合は、最期は安楽死を選ぶ人が多いです。ある意味、割り切っているんでしょうね」

オーストラリアで10年看護師をした人が峰動物病院で働いているが、いちばんの印象が「日本人はペットの安楽死を選ばない」のだという。

オーストラリアでは、手術にまとまったおカネがかかるとわかると「では、安楽死してあげてください」と迷わず言う人が多かったという。

手術の後にかかるペット自身の負担(痛みなど)や治療費を考えれば、スッと楽にしてあげたほうがお互いに良いと判断する。

日本ではそもそも安楽死という手段があることすら認識していない人が多い。安楽死という言葉自体がタブーで、言ってはいけないと思っているふしもある。

次ページ絶対に安楽死という選択肢をとらない獣医もいる
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