ペットの病気、「安楽死」というタブーの真実 言葉自体タブーかもしれないが選択肢はある

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獣医の中にも、「安楽死をしてあげてほしい」とお願いする飼い主に対して「なんて冷たい飼い主だ」と考える人は少なくないという。

そして、飼い主が頼んでも絶対に安楽死という選択肢をとらない獣医もたくさんいる。

「飼った以上は最後の最後まで一緒に頑張りましょう」

という主義だ。これはこれで正義ではあるが、飼い主に強制することではないと思う。どうしてもかかりつけの獣医と話が合わないときは、病院を替えるという手もある。

「もちろん安楽死を選択したことを後悔する飼い主さんはいます。飼い主さんの意志で寿命を決めたのは事実ですから。ただ、ペットの死に際の苦痛にみちた状態を見てトラウマになる人もたくさんいます。どちらがいいのかはわかりません」

ギリギリまで治療で生かした場合、かえって長く苦しませたという罪悪感が残る場合も多く、以後ペットを飼えなくなる人もいる。

そこからペットロス症候群になる人もいる。ペットロス症候群とは、ペットを失ったショックで心身に疾患が起こることをいう。

安楽死を飼い主に勧めれば、「なんて冷たい獣医だ」と患者から思われるリスクはある。だが、それでも沖山さんは、「安楽死という選択肢もあるよ」と提示するようにしている。

「提示すると、ホッとされる飼い主さんは多いですね」

“安楽死をする条件”を提示することも大事だ

ただ単に安楽死を提示するのではなく、同時に“安楽死をする条件”も提示する。これが大事なポイントだ。

沖山さんが思う安楽死の基準は、

「病気にかかった後でも食べられていた物が、食べられなくなってしまう」

「病状が進行して、痙攣・嘔吐がコントロールできなくなる」

の2点だ。

「そういう状態になっても、点滴で栄養を与えたり、痙攣を抑える薬を使ったりすれば、まだ生かし続けることはできます。でも、それ以上がんばらせるのはかわいそうだとも思う人も多いでしょう。飼い主さんが『ここまでがんばってくれたんだから……』という意識が持てるのならば、安楽死を選んでもいいと思います」

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