なぜ飼い犬が減り、飼い猫が増えているのか ペット界の新王者「猫」を取り巻く光と影<上>
日本におけるペットの歴史が、大きな転換点を迎えているのをご存じだろうか。犬と猫の飼育数が、歴史的な逆転を迎えようとしているのだ。
なぜ猫が人気なのか。そこには、飼い主側である人間のさまざまな身勝手が見え隠れしている。
ペットフード協会の年次推計によれば、2014年10月時点の猫の国内飼育数は996万匹と過去3年間で3.7%増えた。犬がこの間13%減って1035万匹となったのとは対照的だ。
一世帯当たりの飼育数が犬1.25匹、猫1.79匹である点からもうかがえるように、猫は複数飼いが主流である事情も押し上げ要因となっている。今年10月時点での調査結果は来年1月に発表予定だが、このペースで行けば逆転した公算が大きい。
猫の一生70万円、犬は119万円
生涯の飼育平均費用も、猫(平均余命14.56歳)が70.3万円に対し、犬(同14.25歳)は118.5万円。身も蓋もない言い方ではあるが、景気低迷が長期化している中で、飼う側にとってはコスト面で有利なのである。
東京農業大学の太田光明教授は「猫は清潔好きで、犬のように散歩させる必要がない。共働きが増える一方、住宅が狭いことで受け入れられている」と語る。教授は研究室に愛猫を連れてきているが、話を聞いている間、筆者に一回あいさつに来た後は、猫用ベッドでおとなしく寝ていた。
太田教授は「現在、全国約1万1000件ある動物病院のうち、10年後には3割が廃業する」との試算を示す。「医療費が相対的に高い犬の飼育数が毎年50万匹ずつ減って1000万匹から500万匹へと半減すれば、採算が取れなくなる」からだ。
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