婚活カップルが「真剣交際」から破局したワケ 「姉の前で、僕を下の名前で呼ばないで」

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「結婚は決断である」と、私は会員たちによく言っている。1人の生活から2人の生活になる。そのためには決めなくてはいけない事柄がたくさん出てくる。互いの両親へのあいさつはどうするか、住む場所はどこにするか、結婚式はどこで挙げるか、入籍はいつにするか、生活するおカネの配分はどうするか、などなど。順次決めてどんどん行動を起こしていかなければ、2人が一緒に生活するところまでたどり着けない。

業を煮やしている彼女に、私は言った。

「まだお互いの親へのあいさつもしていないでしょう? だとすると、それを終えて、結婚式場探しをして、入籍して、一緒に住むのは、どんなに早くても半年から1年先よ。2時間かかる通勤も数カ月なら我慢できるだろうし、仕事は今回更新したら? 結婚することは決まっているのだから、やれることからどんどんやっていきましょうよ」

こう言う私に、容子は気を取り直したように言った。

「そうですね。私はどちらかというとせっかち。でも、彼はのんびり屋。お付き合いしていたときに私の言うことを何でも聞いてくれたので、こういう人と一緒に暮らしたら楽だと思って決めた結婚でした。私が舵取りをして、やれることから進めていきます」

彼の家の冷蔵庫を開けたとき…

そこから2週間後に、また容子から連絡がきた。

「何だか最近、“この人と結婚していいのかなあ”と、疑問符だらけです。先日の日曜日、孝之さんの家の近くの町並みを案内してもらったんですね。『わあ、ここのスーパーは、いろんなものが売っていて便利ね』と言ったら、『ここは、賞味期限をしっかり見て買わないと、ギリギリのものを値引きもせずに置いておくことがあるんだ』とか、『店員がアルバイトばかりだから、買いたい商品がどこにあるのか聞いてもわからないことが多くて、ちょっとイラッとくることがあるよ』とか、すごく細かいネガティブな発言の連発で、違った一面を見た気がしたんです」

さらにその日、米倉の家の中を見せてもらった。女性だからやはり気になったのは、キッチンだ。システムキッチンの横に古びた小型冷蔵庫があった。“結婚したら大型に買い換えよう”と思いながら、スーパーで買ってきた麦茶をしまおうと冷蔵庫を開けた、そのときだった。

「僕の家だからいいけど、他人の家に行って冷蔵庫を勝手に開けたりしないほうがいいよ。育ちがわかるよ」

そのときのことを、容子は私に言った。

「悪気なく出た言葉だったのでしょうけど、私にはグサッときました。ここのキッチンを将来的に私が使うと思ったから、冷蔵庫を開けるのもごく自然な行動だったんです。他人の家なら私だって冷蔵庫を勝手に開けたりしませんよ」

結婚に向けて歩み始めてからというもの、寄り添おうとすると、物事の考え方や行動するスピードに、すれ違いや違和感を感じるようになっていった。

「あと、歩くときに手をつないだり腕を組んだりするのは、いつも私のほうからなんですね。もちろんキスも、男女の関係を迫られたこともありません。まじめな人だから、“相談所の規約を守っているのかな”と最初は思っていたんですけど、最近、“もしかしてそういうことができない人なのかな”と、不安になってきました」

そこから数週間後、容子の両親へのあいさつが済んだという報告がきた。しかし、そのときの米倉の言動にも、疑問符が立ち上ったという。

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