カリスマ村山斉が挑む、宇宙の”国勢調査” すばる望遠鏡で「宇宙の運命」を迫真ルポ

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「理論の研究者の自分が、装置を作って観測を行うような研究をやるとは思っていなかった」と語るが、機構長になり、仲間が増えたことで研究の幅はぐんと広がった。すみれプロジェクトにかかわる研究者は総勢約100人。その中には、NASAが火星に送った無人火星探査車の設計に携わった人物もいる。

その人物は、分光器での計測に向けて、はるか遠くの銀河の光をとらえられるよう、光ファイバーの向きを10ミクロンの精度で制御できるロボットを作っている。10ミクロンといえば、髪の毛よりも細い長さだ。「こういう人がいるから、安心して計画ができる」と村山氏。

最後に、超多忙な日々の中でどうして次々に本を出しているのか、尋ねてみた。

「公約なんですよ。この研究所を作るとき、国がおカネを出すわけですから、もちろん役に立つことを期待するんですよね。でも、この研究をやって役に立つとはとても思えないので、『この研究は役に立ちません』とはっきり言いました。だけどロマンはあると思うので、『青少年をわくわくさせて科学離れを食い止め、理系に進む若者が増えるように努力します』と言ったのです」

「約束したから」とは言いながら、研究も一般向けの宇宙広報活動も、エネルギッシュに楽しんでいるように見える。

「データが出ていないので、まだいちばん楽しいというところまでは行っていないですね。グループが集まったのはうれしいし、途中の審査で専門家に『行けそうだね』と言われたら、それはそれでうれしいです。アンドロメダ銀河の最初の画像もやっぱり感動しました。そういうステップを1個1個踏んで、宇宙の運命が見えたら、すごく興奮するんじゃないですか?」

すみれプロジェクトの成果について、ユーモアと比喩満載のわくわくするような報告談が聞ける日が待ち遠しい。

(撮影:尾形文繁)


 

長谷川 愛 東洋経済 記者
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