カリスマ村山斉が挑む、宇宙の”国勢調査” すばる望遠鏡で「宇宙の運命」を迫真ルポ

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でも、数学者が言葉を作るとき、宇宙や自然には本質的には興味がないんですよ。そこで物理学者が、数学者の作ってくれた言葉を使って、自然を説明しようとします。

物理学者は理論物理学と実験物理学に大きく分かれ、実験物理学者は直接、宇宙に語りかけて返事をもらいます。理論物理学者は、実験物理学者がもらってきた大事な返事を、数学の助けを借りて理解し、本にまとめるという感じです。

天文学者も実験物理学者と似ています。宇宙を直接見るわけですから、それも一種の語りかけです。『宇宙はこうですよ』という写真を撮って、答えをもらってきているのです」

宇宙を国勢調査する意味

この研究所で現在進行中の大型プロジェクトが、先ほど触れたすみれプロジェクト。ようやく軌道に乗り出した同プロジェクトの目的は、ずばり、“宇宙の国勢調査”をすることだ。

「日本の高齢化の進み方を調べようとするとき、一人ひとりに会ってもわかりませんよね。宇宙もまったく同じで、1個1個の銀河を見ていたのでは、全体の仕組み、今までの歴史、これからの運命がわからない。

そこで“国勢調査”をしなければならないのですが、人工衛星として宇宙を飛んでいるハッブル望遠鏡を使っても、何千年もかかるのです。それでは大学院生も皆、年をとって論文まで至らない(笑)。そこを、ハッブル望遠鏡に比べて1000倍視野が広いすばる望遠鏡を使って、数年でやろうとしています。視野が広く、かつ、遠くの銀河まで見ることができる大きな望遠鏡は、世界にすばる望遠鏡しかないのです。

観測に必要な精度は、東京から富士山を見て、富士山のてっぺんから転がり落ちるピンポン玉をピターッと手振れなしで追いかけられるくらい。そういう技術があるので、すばる望遠鏡は使えるんです」

観測可能な範囲の宇宙全体で、約1000億個あるといわれている銀河。そのうち、これまでに観測されたのはせいぜい数百万個にすぎない。村山氏は宇宙にある銀河の約1割の観測を目指し、ビッグバン以来138億年に及ぶ、宇宙の膨張の歴史を丹念に調べようとしている。これまでの歴史を知って、宇宙に終わりがあるのかを予測しようというのだ。

刻々と変わる、宇宙の将来予測

来年2月からすばる望遠鏡に取り付けたカメラを使った大規模観測を5年間行い、その後、分光器を使った銀河の光の色の計測を5年。かれこれ10年がかりで宇宙の運命を解き明かしにかかる。

イメージしているのは、ビッグバンからの時間と、その時点での宇宙の膨張速度をプロットし、2次元のグラフを描くことだ。便利なことに、タイムマシンを使わなくても、何十億光年遠くの銀河を見ることで、何十億年前の宇宙の姿を知ることができる。

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