使ったのは、約9億画素(普通のデジタルカメラは数百万画素)で3トンの重さを持つ超巨大デジタルカメラHyper Suprime-Cam(HSC)。アンドロメダ銀河の向こう側の銀河が透けて見えるほど鮮明な宇宙の姿を、地球からパシャッととらえた。
村山氏は日本で活動する傍ら、教授を務める米国カリフォルニア大学バークレー校、さらにヨーロッパ、南米など世界中を会議や学会、資金集め等で飛び回る多忙な日々を送る。今回はその合間を縫って、インタビューに応じていただいた。
「この研究所でやろうとしていることはすごく単純で、小さい子どもが空を見上げて思うような質問に答えていきたいと思っています。具体的には、1.宇宙はどうやって始まったのか、2.宇宙はこれからどうなるのか(運命)、3.宇宙は何でできているのか、4.宇宙はどういう仕組みで動いているのか(法則)、5.宇宙にどうしてわれわれがいるのか、という5つの質問です。
その目的を達成するためには、どうしても数学者と物理学者と天文学者が一緒にいないといけないので、『数物連携宇宙研究機構』にしました。3分野の研究者が1カ所にまとまっているのは世界でもここだけです」
3時のティータイムは議論の時間
異分野の研究者が寄り集まった研究所は、隅々まで村山氏のアイデアが張り巡らされている。まず、建物内に交流を阻む「階」がない。屋上から続く階段が、中央の吹き抜け空間を囲んで、地上に至るまでぐるぐると緩やかな螺旋を描く。上から反時計回りに下ると、右手に次々と研究者の居室が現れる作りだ。
部屋割りでは分野が違う研究者が隣り合うようになっているうえ、ドアに大きなガラス窓があって中が見えるので、互いに気軽に話しかけやすい。
毎日午後3時のチャイムが鳴ると、吹き抜けホールに研究者たちが集まり、ティータイムの議論が行われる。取材時は午前中で閑散としていたが、数式で埋め尽くされた大量の黒板やホワイトボードに、前日の白熱した議論の名残を見た。
実際の研究では、3分野の研究者たちがうまくすみ分けて役割を果たしている。
「数学者は言葉を作る人です。研究をしていくと、日頃、私たちが経験しているのと懸け離れたことが見つかってくる。たとえば宇宙にブラックホールがあったり、素粒子の世界がいつも不確定性関係の中で動いていることなどです。人間はそれを説明する言葉を持っていないのですが、数学という言葉を使えば、宇宙を記述することができます。だから数学者の役割は非常に大事ですね。
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