たとえばわれわれが見ている太陽は8分前の姿、アンドロメダ銀河は250万年前の姿。宇宙の膨張速度は、サイレンの音の高さで救急車が遠ざかっていく速度が測れるように、それぞれの銀河から届く光の色の赤さで測ることができる。
宇宙の将来について、15年ほど前まで有力だったのが、投げ上げたボールのように、どこかで止まって収縮を始め、最後にはぐしゃっと潰れて「ビッグクランチ」で終わってしまうというという考え方や、少しずつ減速しながら永遠に膨張するという考え方。ところが、1998年、実は宇宙の膨張が70億年ほど前から加速しているという事実が観測で発覚。宇宙がスピードを上げて膨張し、いつかビリビリに引き裂かれて終わるというシナリオが新たに浮上している。
村山氏は「数年で答えがわかるかどうかは、どのくらい運がいいか、どれだけ宇宙がわれわれに親切かにかかっていますね」と話す。
なぜ、次々に本を出すのか?
「宇宙について何でも知っていて、誰にでもわかりやすく教えてくれる人」というイメージが先行し、村山氏自身の専門分野が素粒子理論だということはあまり知られていない。
「たとえば昨年見つかったヒッグス粒子の話などを主にやっていたのですが、宇宙とのつながりもすごく深いのです。宇宙の物質の8割以上は暗黒物質というものでできていると最近わかり、その正体は素粒子だと思われています。いろんな理論を考えて、予言を調べて、観測と照らし合わせて、『これはいい』『これはダメだ』とやっているのが研究のひとつでした。
そもそも宇宙の最初の頃は、全体が原子1個よりもはるかに小さいミクロの世界だったんですよ。だから素粒子が大事だったわけですね。
でも、素粒子の勉強をしているときには、宇宙とつながっているとは気づいていませんでした。そこへ、大学院を卒業した次の年(1992年)に、ビッグバンが起きたときの赤ちゃんの宇宙の写真が撮られるようになり、宇宙全体が原子1個よりも小さかったときのミクロな宇宙の“しわ”が、マクロな宇宙の銀河の“種”になっているというつながりが、初めて示されたのです。衝撃でしたよ、本当に」
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