ただ“早く描ける”という技術は役に立つ場合が多いという。描き手であっても、いったんアウトプットしないと判断できないことも多い。とにかく一度描いてみて、そこから再度インプットする。脳内で構築し直してアウトプットする。
早く描ければ、それだけ考える量が増えるから有利なのだ。
「絵を描いていく若い人たちが、流行にうまく乗ってブレークする確率は非常に低いです。幸運がないと成功できないでしょう。
ただ僕がやっている古生物復元のように、“研究者から説明されたことを、説明されたとおりに絵に描く”という仕事は、絵が描けるというスキルさえあれば幸運がなくても仕事として成立します。そしてこの仕事はなくなりませんし、意義もやりがいもあります。
ただ多くの人は、こういう仕事があることに気づいていないんですよね。こういうインタビューなどをきっかけに、『そういう仕事もあるんだ、やってみようかな?』と思ってくれる人が増えるといいなと思っています」
若い人にも復元画に興味を持ってもらえればいい
小田さんは自身の仕事のほとんどをネット上にアップしている。またゲームに登場する人気モンスターなどの架空の骨格を描き、SNSで大勢に注目されることもある。
若い人がそれらの作品を見て、結果的に古生物の復元画に興味を持ってくれればいいなと思っている。やる人が増えれば増えるほど、情報が活性化していくし、結果的に条件もよくなっていくのではないかと思う。
2010年から、小田さんはデザインフェスタ(デザフェス)に出品している。同僚の先生が学生を連れてブースを出すというのを見て、自分の絵でグッズを出すのもありなんだなと初めて気がついたという。
自分でも実践してみようと思い友人を誘ってお店を出してみた。それからは毎年参加し、売り場面積も増やしていっている。
そこでは動物の骨を描いた作品の人気が高い。筆者(村田らむ)も大のファンで、キリンの頭骨のスカルのTシャツなど何点も買っている。小田さんの描くスカル(頭蓋骨)はとにかくカッコよく美しいのだ。
「僕はスカルをグロテスクに描けないんですよ。そういう思考がないから。絶対カッコよく美しくなってしまうんです。
スカルを描きはじめたきっかけは、復元画をしていると待ち合わせ場所が博物館だったりするんです。収蔵庫とかにも入れてもらえて、いろいろな珍しい骨を見せてもらいました。そこで『あ~、これ描いてみたいな』という美しい骨もありました。博物館って正式な手続きをすれば借りられるんですよ。それで実際生の骨を見て描くようになりました。本当にいいモチーフに出会えたなって思いますね」
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