
北朝鮮・地方の食品工場で品質向上のために研究中の研究員(写真・朝鮮曙光編集社)
北朝鮮の最高指導者、金正恩総書記は建設現場を訪れ、「現地指導」を積極的に続けている。そのような北朝鮮でこの数年、頻繁に使われるのが「社会主義の全面的発展」という言葉だ。このスローガンの意味するところは何か。北朝鮮は何を目指しているのか。
長年にわたって北朝鮮をウォッチしてきた元公安調査庁調査第二部長の坂井隆氏に、朝日新聞記者の箱田哲也氏が聞いた。
鳴り物入りの「地方発展20×10政策」
箱田:金総書記はじめ、多くの幹部や国営メディアも「全面的発展」を多用しています。どういう意味があるのでしょう。
坂井:大別して、「地理的」と「分野的」という2つの意味が含まれています。地理的というのは、要するに都市、地方を問わず、ともに発展させるということです。そのため、これまで立ち遅れていた地方や農村の振興に最大の力点が置かれています。
箱田:北朝鮮版の地方創生構想といったところでしょうか。
坂井:北朝鮮は2022年ころから、各農村で住宅建設が大々的に開始され、竣工、入居のニュースが頻繁に報じられました。2024年6月時点で、約4万4000世帯を建設したと発表しています。さらに2024年から「地方発展20×10政策」を展開しています。
箱田:何が20で、何が10なのですか。
坂井:毎年20の市や郡に、住民生活に必要な日用品、食料品、衣類などを生産する工場(地方工業工場)を国家負担で新設し、10年間で全国の市郡を網羅するという構想です。すでに初年度分はすべて完工したとしており、2年目に入っています。
トピックボードAD
有料会員限定記事