49歳、「絶滅動物の復元画」を究める男の稼業 ひらめきや瞬発力ではない積み上げが礎に

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小田さんは古生物の復元画家として10年ほど完全にフリーランスとして働いた。時には急ぎの依頼も受けた。

1日15時間くらい描き続けなければならないときもあった。逆に仕事がなくて困ることもあった。やはりフリーランスはなかなか安定感がない。

「10年ほど前に成安造形大学に就職して人体の描写やクロッキーを教えるようになりました。やはり大学から月々確実に収入が得られるのは安定感があります。ただしそれでも気持ちとしてはフリーランサーですね。大学で働く時間も含めて、自分の時間をどこにどのように使うか自分で決めている感覚です」

大学で間違ったことを教えるわけにはいかないから、つねに勉強し続けなければならない。そこにはいつも緊張感がある。

また大学内では、いろいろな人と出会い、知識や経験の精度を上げていった。

毎年続けるうちに、小田さんの中に美術解剖学がうまく出来上がってきた。

大阪芸術大学から、

「その経験をいろいろなコースに供給してほしい」

ということで、准教授に就任した。

構造を解析する美術解剖学の知識が必須

「僕が教えるときには、とにかく一緒に描いてもらうようにしてます。みんな絵描きだし、作り手なんだから形が描けなきゃ仕方がないですからね。そうして人体の機能を覚えてもらっていきます」

化石や骨しかない状態から生きた姿を作り上げる(画:小田隆/丹波市)

復元画は化石や骨しかない状態から生きた姿を作り上げる。それには今生きている人たちの中身がどういう構造になっているのかを解析する美術解剖学の知識が必須だ。

骨と骨をどう筋肉がつないでいるのか。その関節を動かすにはどの筋肉が使われているのか。それがわかってはじめて骨だけのところに筋肉をつけていけるのだ。

それには実際にモデルを見て描くのがいちばんだ。

骨があって、筋肉がある(筆者撮影)

昨今の一部若い絵描き系の人の間では“資料を見ないで描くこと”が最もすばらしいとされる場合がある。写真を見ながら制作することを馬鹿にする人さえいる。

「確かに何も見ずに描くのは傍から見ていて『おおすごい』ってなりますけど、でもそれは本質的な部分ではないですね。そういう大道芸みたいなことができるのが大事なことではないのです。絵を描くってもっと複雑で、もっと考えなきゃいけないし、行きつ戻りつしなければならないことが多い。ちゃんと仕事として描くなら、たくさんの資料を参照するべきだし、実際の物があるなら見て描くべきです。よい資料をどうやって引っ張ってくるか、そういうノウハウは大学で身に付けるといいと思います」

次ページ早く描ければ、それだけ考える量が増える
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