49歳、「絶滅動物の復元画」を究める男の稼業 ひらめきや瞬発力ではない積み上げが礎に

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古生物復元画制作において理想的なやり方に思えるが、この方法は描き手側にかなりの学術的な知識が要求される。研究者の説明の意味がわからなければ、直せないからだ。

「研究者からはけっこう容赦ないメールが来ますね。説明の仕方が研究者向けなんです。僕はいつも研究者さんの要望には100%に近いかたちで応えたいと思ってます。それで研究者さんたちにも楽しんでもらえたら、とてもうれしいですね」

1998年には佐賀県立宇宙科学館に古生物の絵画を納めるという大きな仕事が舞い込んできた。

2000年頃には、図鑑の仕事などが入るようになった。図鑑の仕事は、資料が少なく標本があまり出ていない種でも数をそろえるために想像で描くことも多く、復元の仕事としてはあまり面白くなかった。

世界でいちばん早くビジュアル化する仕事は面白い

「復元でいちばん面白いのは、新しく見つかった化石を、世界でいちばん早くビジュアル化する仕事ですね。何度かしたことがあります。最近では兵庫県の丹波市で見つかった丹波竜の復元をしました」

丹波竜の復元(画:小田隆/丹波市)

丹波竜の復元は自治体が出資して、研究者だけで延べ数十人がかかわる2年がかりの巨大なプロジェクトだった。ただどれだけプロジェクトが巨大でも、復元ではとにかく出てきた化石しかきっかけにすることができない。

「新しい化石だから研究者も僕も何のイメージを持てないんですよね。むしろ持たないほうがいい。一つひとつ研究を積み重ねていって結果的にこんな形だったんだ、ってなるのが理想なんです。そうすれば非常にオリジナリティの高いものになります」

結果的導き出された最新の形は1年も経てば古くなる。数年後には大きく覆ってしまうかもしれない。ただしそうであったとしても過去に出た答えの価値がなくなるわけではない。研究が連綿と続いていくことにこそ価値があるのだ。

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