41歳「電子機器」に強烈な情熱を注ぐ男の稼業 大きくした会社を去ってモノづくりに戻った

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九鬼隆則さん。「昔から電子基板を見るのが楽しくて仕方ない人間なんです」と笑う(筆者撮影)
これまでにないジャンルに根を張って、長年自営で生活している人や組織を経営している人がいる。「会社員ではない」彼ら彼女らはどのように生計を立てているのか。自分で敷いたレールの上にあるマネタイズ方法が知りたい。特殊分野で自営を続けるライター・村田らむと古田雄介が神髄を紡ぐ連載の第39回。

会社は小規模だが、商いは大きい

東京の某所。自宅からほど近いオフィス兼ラボで、九鬼隆則(くき たかのり)さん(41歳)は開発中の電子機器に囲まれて仕事をしている。籍を置くゴッパ合同会社は家族経営の会社だ。

ラボに置かれているゴッパ製品(筆者撮影)

基本的には九鬼さん1人で回しており、電子基板と向き合う傍らで、台湾や中国の提携工場とやり取りし、開発した製品の調整などをしている。2016年の設立以来、「Bluetoothカラオケマイク」シリーズやUSB充電器「ENERGEAR」シリーズなどをリリースしてきた。

会社は小規模だが、商いは大きい。主な納入先はパソコン周辺機器の大手メーカーであるアイ・オー・データ機器で、販売や営業、サポートなどを先方に丸ごと委ねている。そうすることで自身のリソースを製品開発に集中できるかたちをとっている。いわば開発部門の独立遊軍が会社の外に飛び出したようなものだ。アイ・オー・データ機器は九鬼さんの古巣ではあるが、会社を離れてから10年以上交流はなかった。今のような関係が築けるのはなかなか珍しい。

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それが成り立っている背景には、九鬼さんのこれまでの戦略的、かつ精力的な生き方がある。自他共に認める電子工作少年が“一人メーカー”になった経緯を教えてもらった。

九鬼さんが生まれたのは1977年5月の愛知県。名古屋市の北にある春日井市で4人家族の長男として育った。小さな頃から図工と科学が好きで、中学2年生の冬に友人が手作りの小型FMラジオを見せてくれたのをきっかけに電子工作の世界にのめり込む。

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