パナが「テクニクス」育成に力を入れる理由 唯一の女性役員が語る苦闘と本音
イタリアの高級宝飾品ブランド「ブルガリ」が“輝く女性”をテーマに10人を称える「ブルガリ アウローラ アワード」。2016年10月に行われた授賞式では、著名なアーティストや女優などと並んでパナソニック役員の小川理子氏が、華やかな金色のカーペットを歩いていた。
国内外で活躍するジャズピアニストという肩書きも持つ彼女は、新生“テクニクス”ブランドを立ち上げ、牽引しているエンジニア出身のパナソニック役員でもある。小川氏に初めて取材したのは2000年頃だったからずいぶん昔のことだ。
つねにスポットライトを浴び続けていた小川氏の印象は実に華やかだったが、そんな表向きの印象とは異なり、パナソニック役員・アプライアンス社常務と兼任でテクニクス事業推進室長となり、ブランドの立ち上げを担当してからは悔しい思いの連続だったという。
しかし、テクニクスのブランド構築は“ベルリンフィルとのアライアンス”という形で、ひとつの節目を迎えようとしている。総合電機メーカー・パナソニックにおける高級オーディオ事業には、どのような意味があるのか。どんな成果を出そうとしているのか。小川氏に本音で質問をぶつけてみた。
当時は冷ややかな目が向けられていた
パナソニックが、本当に高級オーディオという、ある意味きわめて特殊な市場で競争力のある商品を開発できるのか?といった懐疑的な意見に加え、“男の趣味”というイメージが強い黒モノ家電の代表格であるオーディオ事業を女性が担当することにも、ある種のやっかみはあったのかもしれない。
実際、当時は冷ややかな目が向けられていたのを記憶している。そうした目は、どちらかと言えば“パナソニック社内”から向けられていた。パナソニックという会社が大きな危機を乗り越え、新しい企業としての形を整える中で、本当に必要な事業なのか?という疑問もあったはずだ。
2014年9月、パナソニックが高級オーディオ機器ブランドとして「Technics(テクニクス)」を復活させると発表したとき、その復活を喜ぶ声がある一方で、今さらパナソニックが高級オーディオに手を出してうまく行くはずがないという疑問の声もあった。
筆者は復活直前から「技術的な側面で独自性が出せる」とコア技術についての説明や試作品の視聴を経験していたため、比較的素直にその発表を受け止めることができたが、予備知識なくその計画を聞いたなら、おそらく驚いたに違いない。
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