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日本製鉄のUSスチール買収、「大人の解決策」で大逆転。待ち受ける政治リスク、真の勝利とできるのか

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日本製鉄の橋本英二会長。USスチール買収の差し止め命令を出したバイデン大統領(当時)らを訴えるなど、アメリカ政府を相手に筋を通した(撮影:梅谷秀司)

政治問題化して暗礁に乗りあげていたUSスチールの買収劇が、日本製鉄の逆転勝利で決着した。

2023年12月の買収計画発表から1年半となる6月18日。日本製鉄はアメリカの老舗鉄鋼メーカー、USスチールを141億ドル(約2兆円)で買収したと発表した。2024年の粗鋼生産量は日本製鉄が世界4位、USスチールは29位で、合算すると3位に肉薄する水準となる。

成否はぎりぎりまでわからなかった。アメリカ・トランプ政権からの「承認」が得られたのは、発表のわずか4日前。最終的に、国家安全保障協定(NSA)をアメリカ政府と結び、USスチールの経営の重要事項について拒否権を持てる「黄金株」をアメリカ政府に発行することを条件に承認された。

買収完了から一夜明けた19日。東京・丸の内の本社で記者会見した橋本英二会長は「大英断をいただいた」とトランプ大統領への謝意を口にした。

「やりたいこと阻害されない」

日本製鉄が結んだNSAの主な中身はこうだ。

日本製鉄が2028年までにUSスチールの設備投資に110億ドル(約1兆6000億円)を投資する▽本社を現在のピッツバーグのままにする▽取締役の過半数をアメリカ国籍にする▽CEO(最高経営責任者)など経営中枢をアメリカ国籍にする▽アメリカ国内の生産能力を維持する、など。

加えて、アメリカ政府は黄金株を通じて、独立取締役1人の選任権を持つほか、NSAに盛り込んだ投資の削減や会社名などの変更、アメリカ国外への移転、アメリカ国内の協業事業の重要な買収、既存製造拠点ほ閉鎖・休止などについての拒否権も保有することになる。

橋本氏はこれらを「安全保障にはあまり関係がない産業政策、雇用政策だ」とし、こう強調した。「やりたいことが阻害されることはない」「経営の自由度は確保されている」。

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