知っておきたい「破産」にまつわる基礎知識 会社にバレずに生活を立て直すことは可能だ

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破産手続で債権者に弁済する対象となるのは「破産者自身の資産」です。そのため、夫が破産する場合、基本的に妻の資産は夫の債権者への弁済の対象にならず、持っていかれることはありません。

ですが、形式的には妻名義の財産でも、それが夫の資金で購入したものである場合には実質的に見て夫の資産なので、持っていかれてしまいます。

また「夫婦でマンションの共有持分を2分の1ずつ持っている」という場合、夫が破産したら夫の共有持分2分の1も債権者への弁済の対象となってしまいます。こういうケースの場合は、大体は、「妻に、夫の共有持分2分の1を任意売却で買ってもらう、そしてそのおカネを債権者への弁済に回す」という形か、「マンションを売却して、その売却代金の半分を妻に、残り半分を債権者への弁済に回す」という形で対応することが多いです。

そして、妻が夫の債務の全部または一部について保証をしている場合、夫が破産した場合には、夫への請求が全部妻にくることになります。こういう場合は、夫だけでなく妻も破産するケースが多いです。

なんでもチャラになるわけではない

破産しても、必ず免責が許可されるわけではありません。免責が許可されなかった場合、財産は弁済に回され、しかも、弁済後残った債務の支払い義務もなくならないことになります。踏んだり蹴ったり……。

たとえば、収入に見合わない浪費、パチンコ・競馬などの賭博、株取引などの射幸行為により著しく財産を減少させまたは過大な債務を負担した場合は、免責が許可されないことがあります。個別具体的な事情によるので、つねに許可されないというわけではありません(ほかにも免責が許可されない事由はあります)。

免責が認められても、例外的に免責の対象とならない、つまり法的な支払い義務がなくならない債務もあります。なんでもチャラになるわけではないのです。

たとえば、税金、国民健康保険料、養育費、婚姻費用(結婚してから離婚するまでの、夫婦生活の維持に必要な費用)などは免責の対象とならず支払い義務はなくならないので、ご注意を。

最後に。上記は破産のほんの一部分についての説明なので、実際に破産を検討される場合には専門家に相談してくださいね。

宮川 舞 銀座数寄屋通り法律事務所 弁護士

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みやがわ まい / Mai Miyagawa

東京弁護士会所属。会社間の紛争を中心に、訴訟を多く手掛ける。また、『名誉毀損の慰謝料算定』(学陽書房)の執筆陣に名を連ねるなど、名誉・信用・プライバシー・肖像・パブリシティの侵害に関わる研究や事案に造詣が深い。弁護士による誹謗中傷対策 弁護士宮川舞公式サイト

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