1億再生も生み出せる新世代YouTuberの正体 グリーやカドカワが熱視線を注ぐ「VTuber」

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とはいえ、さまざまな試行錯誤が続く中、ユーチューバー同様に「炎上」などのリスクも存在する。世界初のVTuberともいわれるキズナアイの誕生から1年と半年あまり。多くのVTuberもスタートから1年程度と、この新しいタレント(才能)が、どのように支持され、どこまで広がりを見せるかを予想することは現段階では難しい。

現在、BS日テレで毎週放送されているキズナアイの冠番組「キズナアイのBEATスクランブル」は、VTuberが初めてテレビ番組に出演するとなって注目を集めた。しかし、今年4月の放送開始からまもなく番組内容があまりにもひどすぎるとして、スポンサーがツイッターで批判を展開、提供を降りるという事件が起こった。この件は低予算を理由に再放送が繰り返されたり、安直とも見える番組内容であったりしたことが原因とみられている。

再生数に応じた広告収益がその運営を支える以上、過去にユーチューバーが起こした騒動と同様、「目立つために露悪的な行動をする」VTuberが出てくることは想像に難くない。運営事業者による監視やペナルティ付与の体制が十分に整い、悪質な投稿者が淘汰されるまでは、VTuberも残念ながら子どもに手放しで見せられるメディアではないのもまた事実だ。

「仮想空間」でのライブや交流が実現する可能性も

一方で、VTuberには、そのコンテンツが広がる空間をYouTubeという2次元だけにとどまらない力を秘めている。たとえば、最近注目を集めている「Oculus Go」などのVRゴーグルを活用することで、VTuberや視聴者が仮想空間に集まって、見るだけにとどまらないリッチなコミュニケーションが取れる可能性が現実のものになりつつある。

オキュラスは、すでに多人数参加型のVRライブ配信サービス「Oculus Venues」をリリースしている。このサービスは、アバター(分身となるキャラクター)に扮したほかのユーザーと同じバーチャル空間で試合中継や音楽ライブなどの視聴を楽しむことができるというものだ。離れた場所にいても同じ場所で、フェイスブックの友だち同士で人気VTuberのライブ番組を参加しながら楽しむ、というスタイルがまもなく当たり前のものになるかもしれない。

2000年代前半に話題を集めた「セカンドライフ」で語られていたような3Dバーチャル空間での生活が、約15年の時を経て現実のものになろうとしている。いま、VTuberの活躍の範囲とビジネスの可能性は2次元空間であるYouTubeに縛られるものではないはずだ。

まつもとあつし ジャーナリスト・コンテンツプロデューサー・研究者

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Atsushi Matsumoto

ASCII.jp、ITmedia、『ダ・ヴィンチ』などに寄稿。著書に『コンテンツビジネス・デジタルシフト』(NTT出版)、『ソーシャルゲームのすごい仕組み』(アスキー新書)など。取材・執筆と並行してコンテンツやメディアの研究を進めている。敬和学園大学国際文化学科准教授/法政大学社会学部・専修大学ネットワーク情報学部講師。公式サイト

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