米朝会談は、結局のところ「成功」か「失敗」か 過去にも「非核化」で合意したことはあるが…

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韓国は休戦協定に署名しなかったので、北朝鮮、米国および中国とは違った立場にあるが、平和協定を必要としている点では韓国を別に扱う理由はない。要するに、正式の平和条約は南北朝鮮、米国および中国の4者の間であらためて締結する必要がある。

米国は国連軍を代表していたことや、中国は義勇軍であったことなどの問題もあるが、朝鮮戦争を法的に終結させるためには、この4カ国が当事者となるとみなしてよいだろう。

トランプ氏と金正恩氏が再度会談する可能性も

米国が求める非核化と北朝鮮が求める国家承認はきわめて複雑な問題であり、その詰めのためポンペオ国務長官以下が北朝鮮のカウンターパートと協議を継続することとなった。

トランプ氏と金正恩氏が再度会談する可能性も高い。トランプ氏は記者の質問に対してそのことを肯定していた。70年間こじれたままになっていた関係を正常化するのは簡単なことでない。今回の会談後も協議を継続させるのは、むしろ自然だ。

拉致問題については、トランプ大統領は今回の会談で金委員長に提起したが、結論は得られなかったようだ。これも今後の協議の中でさらに話し合われることとなった。

米朝首脳会談に先立つ7日、安倍首相はトランプ大統領との会談後の記者会見で「拉致問題を早期に解決するため、私は北朝鮮と直接向き合い、話し合いたい。あらゆる手段を尽くしていく決意だ」と発言した。いままで「圧力」一辺倒であったが、情勢の変化に合わせてこのような姿勢を打ち出したことは評価できる。

日本政府は拉致問題の解決のため、トランプ大統領に助力を要請したのは現実的な方策であったが、自ら努力することも絶対的に必要だ。今後、日本政府は安倍首相の発言通り、金正恩委員長と直接話し合うことによって、早急に解決を図るべきだ。

北朝鮮は、「拉致問題は解決済み」と主張しており、ストックホルムで合意された特別調査はすでに完了したとの立場である。一方、日本政府は、調査が続けられるものとの認識である。この認識の違いを解消することがまず必要になるだろう。

美根 慶樹 平和外交研究所代表

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みね よしき / Yoshiki Mine

1943年生まれ。東京大学卒業。外務省入省。ハーバード大学修士号(地域研究)。防衛庁国際担当参事官、在ユーゴスラビア(現在はセルビアとモンテネグロに分かれている)特命全権大使、地球環境問題担当大使、在軍縮代表部特命全権大使、アフガニスタン支援調整担当大使、日朝国交正常化交渉日本政府代表を経て、東京大学教養学部非常勤講師、早稲田大学アジア研究機構客員教授、キヤノングローバル戦略研究所特別研究員などを歴任。

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