「核兵器廃棄の期限」については、廃棄にはどうしても一定の時間がかかる。そのことを理解した上で、無制限に時間をかけることは認められないので、期限を設けることが必要になる。また、期限はできるだけ近い時点に設定しなければならない。具体的にいつを期限とするかは、今後の交渉次第である。
もう一つの「効果的な検証システム」を構築するのはきわめて技術的、専門的なことなので、ある意味廃棄の期限設定よりもっと厄介な面がある。しかし、重要な点は、「いつでも、どこでも」査察ができるようにすることである。「軍事施設」を理由に査察を拒否することや、隠ぺいの危険があるからだ。
さらに、北朝鮮の核不拡散条約(NPT)への復帰も必要だ。これが実現すると、北朝鮮は査察を受けることが法的な義務となる。
これまでの最高点は2005年9月の共同声明
具体的な内容が明確でない「非核化」への言及としては、いわゆる6者協議の2005年9月の共同声明があった。この合意は、北朝鮮の非核化について国際社会がこれまで到達した最高点であったが、「北朝鮮は、すべての核兵器及び既存の核計画を放棄する」と謳っただけであった。また、検証については、「核兵器不拡散条約及びIAEA保障措置に早期に復帰する」とだけ記載していた。
この共同声明が失敗であったことは周知のとおりである。だから、トランプ・金両氏は前述した二点を含め、共同声明以上の具体的な内容について合意しなければならない。今後の協議において、「核兵器の廃棄」と「検証可能」の具体的内容について合意できなければ、会談は失敗であったとみなされ、「大山鳴動、鼠ゼロ匹」と批判されるだろう。
よく、「完全な非核化」のためにはCVID、すなわち、「完全な、検証可能な、不可逆的な非核化」が必要だという。ポンペオ国務長官もそのような説明をしているが、実は、CVIDも、それだけでは、共同声明と同様具体的内容に欠けるのだ。CVIDはいらないというのではない。必要条件だが、十分条件ではないのである。
一方、米国が北朝鮮に与えるのは「国家承認」である。朝鮮戦争の休戦協定を「平和条約」に転換することとか、「不可侵協定」、「攻撃しないとの保証」などで表現されることもある。
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