イギリスの超天才が歩んだ数奇で波乱な人生 アラン・チューリングを知っていますか

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81. ランチデートのあと、アランは週末を一緒に過ごそうと自宅に招くが、マレーはその誘いを断った

82. 次の月曜日に二人はマンチェスターで再会。数週間後、マレーはアラン宅を訪問し一夜を共にしたとみられる

83. その後、アラン宅に泥棒が侵入し、彼は警察に通報するが、その捜査の過程でマレーとの関係が明るみになる

84. 泥棒を手引きしたのはマレーだったが、当時のイギリスで同性愛は違法だったためアランも逮捕されてしまう

85. アランは有罪となり、〈入獄〉か〈化学的去勢を条件とした保護観察〉かの選択を迫られ、彼は後者を選んだ

86. 選択は屈辱的ではあったが、当時、性欲を抑えると考えられていた女性ホルモン注射の投与を受け入れた

87. 1954年6月8日、自宅の寝室で亡くなっているアランの姿を家政婦が発見する

88. 検死の結果、青酸中毒死と判明。部屋には青酸の瓶が多数あり、彼のベッド脇にはかじりかけのリンゴがあった

89. そのリンゴに青酸化合物が塗布されていたかどうかの分析はなされなかったが、死因審問で自殺と断定された

90. アランの母は自殺を否定し、実験用化学物質を不注意に扱ったための事故であると主張した

「白雪姫」のワンシーンをまねて…?

91. しかし当時の同僚は映画『白雪姫』を観た直後、〈魔法の秘薬にリンゴを浸けよう〉と彼が呟いたのを聞いていた

92. それゆえアランが『白雪姫』のワンシーンを真似て、このような死を選んだのではないかという説もある

93. 彼の死後、1966年にはコンピュータ科学者による国際学会ACMがその名を冠した「チューリング賞」を開設

94. コンピュータ科学分野で革新的な功績をおさめた人物を表彰するもので、この分野で世界最高の権威を持つ

アラン・チューリングらとともにエニグマ暗号文の解析にあたった猛者たち。2009年、ブレッチリー・パークにて(写真:ElenaMorgan/iStock)

95. 2009年8月、イギリスのプログラマー兼作家のジョン・グラハム・カミングがアランの名誉回復の請願活動を開始

96. 請願には数千人の署名が集まり、当時のイギリス首相ゴードン・ブラウンは同年9月に政府として正式謝罪した

97. 2012年英国貴族院に正式な恩赦の法案が提出。翌2013年12月24日エリザベス二世女王の名で恩赦が発効された

98. 2014年ベネディクト・カンバーバッチ主演の映画『イミテーション・ゲーム/エニグマと天才数学者の秘密』が公開

99. アランの銅像は数あるが、マンチェスター大学に隣接するサックビル・パークの銅像はリンゴを手にしている

100. その背後のベンチには〈Father of Computer Science〉をエニグマで暗号化した文字列が記されている。

(文:寺田 薫/モノ・マガジン2018年7月2日号より転載)

参考文献・HP/『エニグマ アラン・チューリング伝』(勁草書房)、『チューリング 情報時代のパイオニア』、(NTT出版)『暗号解読』(新潮社)、ベネディクト地球歴史館、ロボマインドほか関連HP
モノ・マガジン編集部

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