データサイエンティストは自己陶酔にすぎない リクルート「スーモ」、1000万人のデータ分析の裏側

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データも同じで、ただ集めるだけでは意味がありません。もやもやしているマーケティング課題を“意訳”して、データ分析できる状態に落とし込み、ストーリーとなる仮説を作るのです。そのうえで趣旨に合ったデータを選び、年収と年齢をクロス集計してみようとか、具体的な分析手法に移るわけです。これは結構、感性がものを言う部分だったりします、“アート”な世界ですよね。

逆に、プロのクリエーターの世界もデータ分析と同じ“サイエンス”な部分があると思うのです。CMを作ったり、コピーを考える人も自分の中では、データ分析みたいに順序立てた“フレームワーク”があるはず。

たとえば、エッジの立ったコピーは、素人でも1、2個なら書けると思うのです。でも、それを100個出してと言われたら、きっと書けないでしょう。プロは違います、100個書ける。なぜならコピーの発想術がフレーム化されているから。年齢・性別といったカテゴリーごとに出すとか、企業・社会・個人といった観点ごとに出すとか、その人の中で発想方法がフレーム化されていれば、10個の観点ごとに、それぞれ10個のコピーを書けば100個になる。もうプロならほとんど自動的にできるレベルに、こういう思考が構造化されているのだと思います。

――どちらも本質は同じようなところがある。

基本は同じだと思いますよ。ピカソだって普通の絵もすごくうまかったのに、あえて外すようになって有名な画風が生まれた。もともとのフレームがあってこそ、そこからずれることもできるのです。違うのは結果にたどり着くまでのお作法の部分だけ。最終的にマーケティングの世界でも問われるのは結果ですから。

実は、私もデータ分析の仕事はあと2年ぐらいしたら、身を引こうかなと思っています(笑)。もっとデータとクリエーティブを融合させられる人になりたい。映画の世界も引き続き魅力的だし、コピーライトの勉強もしたい、CMクリエーティブをデータで評価する、なんてことも興味がある。マーケティングの世界を見渡しても、両方に精通した人はほとんどいません。

サイエンスとアートの要素、両方を生かしたマーケティングで意思決定できる人材、今後、そういった人たちが求められるし、新しい価値を生み出すようになると思っています。

(撮影:今井 康一)

早川 くらら ビルコム コンサルティングDiv General Manager

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はやかわ くらら

2005 年 ビルコム株式会社入社。新規事業担当、採用担当、アライアンス担当、営業担当を経て、コンサルティングDivのGeneral Managerに就任。協和発酵キリン、クラシエフーズ、ブリヂストンなど国内外大手クライアントを持つ部署全体を統括し、戦略的PRプランニングなどに携わる。

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