データサイエンティストは自己陶酔にすぎない

リクルート「スーモ」、1000万人のデータ分析の裏側

――どんなものですか?

CMを500万円増やしたらどれくらい認知度が上がるかとか、価格をあと10円下げたらマーケットシェアを何%上げられるか、といったことがわかるツールです。精度が低くて時間のかかる既存のツールを捨て置き、エンジニアとして独りでコツコツと1年半かけてゼロから作りました。実際にそのツールによって広告効果が高まり数字的な成果にも結び付いたんですよね。

吉永恵一●リクルート住まいカンパニー・SUUMOネット横断企画部データマーケティングチーム チームリーダー  ドキュメンタリー映画の編集、データ解析、マーケティング・コンサルティング業など経て、2010年リクルートに入社。2012年より現職。需要予測や広告予算の最適化、リコメンデーションなどデータ・サイエンスを活用した各種マーケティング施策を推進。

個の力が強いリクルートですが、これだけ人数が多くなると、ひとりのナレッジ(知識)をデータで共有するメリットも大きくなります。会社もそのことに気づいて、だんだんと一緒にやるメンバーが増えていき、今では30人ほどのチームになりました。開発部分も大きくなり、現在はその機能をリクルートテクノロジーが引き継いでいます。SUUMOに限らず、データ分析が適した事業環境にあるビジネスには、分析する人間がついていますね。

ビッグデータブームにモノ申す

――最近、「ビッグデータ」「データサイエンティスト」という言葉が普及し、ブームのようになっています。

どちらかと言うと、私自身はこのブームには否定的です。北米では、データサイエンティストが、“21世紀で最もセクシーな職業”と言われているようですが、ただの自己陶酔だと思いますよ。本当はかなり泥臭い仕事なんです。

実は10年前にも同じようなブームがありました。“テキストマイニング”のブームです(編集部註:テキストマイニングとは、文章の単語や文節をデータとして解析して有用な情報を取り出す手法)。しかし、言葉だけもてはやされて、現場ニーズと距離感が縮まらなかった。現場からすると「なんだか難しいことやっているんだね」という印象だけで、何のためのデータ分析なのかが置いてきぼりにされてしまっている。今回もブームが冷めてきたときに、みんな目が覚めるのではないかなと思います。

――ブームを一過性にしないためには?

いちばん重要なのは、コミュニケーションです。実はデータ分析自体は、10年前と比べて手法が進歩したわけではなく、新しいソリューションではないのです。にもかかわらず、いまだに企業できちんと使われていないのは、定着に至るまでのコミュニケーションがないから。データ実務者と、マーケティング担当者では知識やスキルセット、さらにはキャラクターも違います。それを理解したうえで、現場でシンプルな意思決定をするために、両者の橋渡しをしていくことが非常に重要です。

次ページデータ分析にも必要な「アート脳」
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