江戸時代の笑いのセンスを浮世絵で見てみようという展覧会、「笑う浮世絵 戯画と国芳一門」が、原宿の太田記念美術館で開かれている。マンガのルーツとも言われる江戸の「戯画」とはどんなものなのか? フランス人にも人気というこの展覧会について、主任学芸員の渡邉晃さんにお話を伺った。
とうもろこしの歌舞伎
浮世絵には『富嶽三十六景』のような風景画、歌舞伎俳優を描いた役者絵、美人画などのほかに、面白おかしい絵を描いた「戯画」というジャンルがある。社会を風刺した大人向けのものもあれば、「コロコロコミック」を思わせる、小学生に受けそうな謎解きや下ネタもあった。
「江戸の町では、今の書店にあたる“絵草紙屋”で浮世絵が売られていました。小さな店は子供の頃に行った駄菓子屋のようなイメージ。絵がひもで吊るされていたり、台の上に並べられていたりして、庶民が好きなものを選んで買っていました」
浮世絵は木版画で何十枚、何百枚と大量に刷ることができるので、価格は今でいえば1枚数百円だった。
「なるべく16文以下で 売るようにとのお触れ書きが出ていました。二八そばが1杯16文ですから、400円、500円ぐらいでしょうか。3枚セットで60文というものや、 現在の感覚で1枚数千円もする高価なものもありました」
中には7000枚の大ヒットになった役者絵もあったという。
さて、風景画や武者絵に筆を振るう一方で、戯画にも才能を発揮したのが江戸後期の絵師、歌川国芳だった。上の『道外とうもろこし 石橋の所作事』では、とうもろこしのヒゲを毛に見立てて、歌舞伎の「鏡獅子」の毛振りを描いている。
ぐるんぐるんと毛を回す激しい踊りで、昨年亡くなった中村勘三郎が得意とした演目だ。お囃子は、サツマイモとカボチャ(シイタケという説もある)が担当している。国芳はこのように野菜や動物を擬人化したユーモラスな絵を数多く描いた。
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