抜擢人事は組織にノイズを起こすの。だから、日本の会社はノイズを起こさないようにしている。ましてや、「女の抜擢」なんてしたがらない。女は組織にとってノイズそのものだからね。
――女は会社にとってあくまで異分子で、異分子が目立つと組織の規律が乱れるということですか?
そう。私は1990年代から、日本の企業の女性の採用比率をずっとチェックしてきたの。それで、2割のところまでは、ずっと上り坂だった採用比率が、足踏み状態になったのに、わりと早く気づいた。女性の採用比率には「3割の壁」があるのよ。
――確かに、女性比率が3割程度にとどまっている会社は非常に多いです。
経営学者のロザベス・モス・カンターは、「黄金の3割」という法則を提唱しました。マイノリティは3割を超えるとマイノリティではなくなり、組織が変わる、とね。
女の存在感というのは、面白いもので、4割が女だと半々に見えるの。共学化した旧女子校を見ていてもそう。女が半分いると、女のほうが多く見えてしまう。たぶん日本の会社の経営者は、男と女の人数が半々になると、意思決定を含めた企業体質が変わると直感的な恐怖心を持っているのね。
――女を重用すると、男社会の組織に動揺が走って、一枚岩でなくなることをおそれている、と。しかし、最近では、安倍政権の方針に倣い、「2020年までに女性管理職比率を20%に高める」などと目標設定している会社も増えています。
それは現行の組織文化を変えないまま、そこに適応してきた女を上にあげようというだけでしょ。雇用や評価のルールを変えようとはしていませんよ。
仕事の充実と家庭責任の両方が果たせる、「柔軟な働き方(会社に出たり入ったり、ライフステージによって短時間で働いたり、フルで働くことができる)」の実現を阻む諸悪の根源は、年功序列と新卒一括採用よ。そこに手を付けようと大胆なことを言う会社なんてないじゃない。
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