ベオグラードを走る日本のバスが伝えること 知られざる中欧の親日国「セルビア」

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さて、最後に紹介したいのが、セルビアの観光資源だ。セルビア統計局の2016年データ(最新)によれば、同年に日本を訪れたセルビア人の数は2486人、一方、セルビアを訪れた日本人は5245人だ。訪問目的別に集計していないため、このうち観光客がどれくらいを占めるのかわからないが、いずれにせよ活発とは言いがたい。これには、成田からベオグラードへの直行便が就航していないという事情もあろう。

セルビアの観光資源について、グリシッチ大使は「セルビアは小さな国だが、北部には平地が広がり、南部は山がちであり、とても起伏に富んだ自然がある。また、中世のセルビア正教会の建造物は歴史的にも貴重な建物であり、日本人の皆さんにも興味を持ってもらえるのではないか。さらに、セルビアには日本人も大好きな数多くの温泉がある。ミネラルが豊かな温泉は療養目的で使用されており、日本とは異なり水着を着用して利用する」という。

筆者がセルビアの観光資源の中で注目しているのは、南西部の山あいを走る「シャルガンスカ・オスミツァ」という小さな蒸気機関車やディーゼル機関車が牽引する観光鉄道だ。セルビア語で数字の8を「オーサム」というが、上空から見ると、線路が8の字状にループを描きながらシャルガン山を走るのが名前の由来になっている。かつては、セルビアからボスニアを経由し、クロアチアまで伸びていた鉄道が廃止され、その一部を観光鉄道として復活させた。

セルビア南西部の山あいを走る「シャルガンスカ・オスミツァ」という観光鉄道(写真:D.Bosnic)

グリシッチ大使は「まず列車そのものが小さくてかわいらしいのと、典型的なセルビアの山の風景に出合えることから多くの観光客を引きつけている。以前は、ベオグラードからのアクセスはあまりよくなかったが、最近、部分的に高速道路が開通し改善された。ツアーもあるので参加してみてはどうか」と勧めてくれた。

大きくなりつつある中国の存在感

以上のように親日国であり、少しずつわが国との経済的交流も進むセルビアだが、最近、セルビア経済に大きな存在感を示しつつあるのが中国だ。ベオグラードとハンガリーの首都ブダペストを結ぶ高速鉄道を習近平国家主席が提唱する「一帯一路」構想の一環として計画しているのをはじめ、2014年に完成したドナウ川に架かる「ミハイロ・プピン橋」は、中国により建設されたものだ。

グリシッチ大使は「中国とセルビアは永い友好関係にあり、(経済的な)存在感を高めてきていることは確かだ。しかし、セルビアは開かれた市場であり、どこの国が来てもウェルカムな状況だ」という。

セルビアのみならず、中・東欧にはハンガリーをはじめ親日国が多いが、手をこまねいていれば、相対的に影響力の地盤沈下が起きるのではないかという懸念は杞憂ではないように感じる。

なお、セルビアは2025年までのEU(欧州連合)加盟を目指している。これにより、今後大きく市場の状況が変化する可能性もある。

森川 天喜 旅行・鉄道作家、ジャーナリスト

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もりかわ あき / Aki Morikawa

現在、神奈川県観光協会理事、鎌倉ペンクラブ会員。旅行、鉄道、ホテル、都市開発など幅広いジャンルの取材記事を雑誌、オンライン問わず寄稿。メディア出演、連載多数。近著に『湘南モノレール50年の軌跡』(2023年5月 神奈川新聞社刊)、『かながわ鉄道廃線紀行』(2024年10月 神奈川新聞社刊)など

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