ベオグラードを走る日本のバスが伝えること

知られざる中欧の親日国「セルビア」

冒頭に登場した「ヤパナッツ」と呼ばれる93台の黄色いバスは、こうした一連の紛争と国際社会による経済制裁で疲弊したセルビアに対し、2003年に日本政府が無償資金協力によってベオグラード市に寄贈したものだ。2000年のミロシェヴィッチ大統領退任による実質的な民主化の後、国際社会がセルビア支援を開始しはじめていた。

当時、老朽化したバスが走っていた中で、「日本から贈られた93台の新車のバスは衝撃的だった。実はこのとき、日本政府からバスをきれいに使うようにという条件が付けられていた。われわれはこれを、日本人がこのプロジェクトに真剣に取り組んでくれていることを表すメッセージと認識した。日本は教育のレベル高く、道にゴミを捨てない、物をきれいに使うという意識が全国民に浸透している。93台のバスは、こうした日本人のような考え方を持たなければならないと、セルビア人が考えるきっかけになった」(グリシッチ大使)という。

今もすべてのバスが現役で活躍

ちなみにバスは、今もすべてが現役で活躍しているといい、ベオグラード市民がいかに大切に使っているかがわかる。むしろ最近は日本のほうが、使い捨て文化が浸透しているようで、なんとも気まずい思いを感じるのは筆者だけではないだろう。

セルビアの首都ベオグラードを走る日本が供与した黄色いバスは、日本人を意味する「ヤパナッツ」と親しみを込めて呼ばれている。2016年3月撮影(写真:SerbianWalker.com )

セルビア・日本両国間の支援関係はこれにとどまらない。2011年の東日本大震災発生時には、セルビア政府がいち早く約5000万円の対日支援を行ったほか、平均月収4万円という決して豊かではない同国の経済事情にもかかわらず、セルビア国民から赤十字などを通じて約1億9000万円という多額の義援金が寄せられた。このときはベオグラードのみならず、地方都市でもチャリティ活動が行われたという。

このような活発な支援は、ヤパナッツをはじめとする紛争後の日本による多額の支援に対する感謝の念が示されたものといえよう。加えて、もともとセルビアが親日国であり、武道への関心が高く、黒澤明作品をはじめとする日本映画や、川端康成、三島由紀夫、谷崎潤一郎、最近では村上春樹らの著書がセルビア語に翻訳され、若者を中心に日本のマンガ、アニメが人気であることも大きい。

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