バルカン流浪の道は、「留置場」と化していた 「バルカンルート」に漂う難民たち<前編>
国境の前で滞留する難民たち
パキスタン出身の男性アフドアは話が止まらなくなった。
「やっとここまでたどり着いたのに、犬だよ、犬で襲わせるんだ」
イスラム教徒が不浄な生き物とし、彼らの多くが尋常じゃない怖がり方をみせる犬。アフドアたちが国境を越えようとすると、警察隊が棒や催涙弾や、よりによって大型犬を使って追い払うのだという。
セルビアの最北部、ハンガリーに接する町スボティツァ。今年9月に筆者が訪れると、 国境近くの田園に援助団体の名前が書かれた簡素なテントが並んでいた。東欧の寒々しい秋空の下で、アフドアらアジアの男たちが所在なくたむろする。そこには子どもを含む500人ほどの難民が、渦巻く不満と不安とともに留め置かれていた。アフドアは続ける。
「もうここには4カ月いる。ハンガリーに入ろうと2回試みたけどダメだった。パキスタンを出たのは去年の11月。トルコからは小さなボートでギリシャに入って、あとはずっと陸路を歩いてマケドニア、セルビアまで来た」
「おれは犬にかまれたんだぜ」
足首の傷跡を見せながらイラク人が話に割り込む。
「家族と一緒に船でイタリアを目指した。だけど自分だけ失敗してギリシャに戻された。あとはアルバニアを通って、コソボ、セルビア。家族はいまオーストリアにいる。私もオーストリアに行くつもりだ」
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