日本は中東欧諸国との関係を深めるべきだ 「懐の深さ」が求められている
安倍晋三首相は、今年1月半ばにバルト三国を含めた旧東欧諸国を歴訪した。この地域の動きが現在の世界の動きを凝縮している点においても、旧東欧諸国をこのタイミングで訪問したことは、まさに時宜を得た歴訪だったといえる。
EUの中でも、これらの旧社会主義圏の国々は2004年以降にEUに正式に加盟した国々であり、いまだEUの外にあるか、EUに入っていてもシェンゲン協定(欧州国家間において国境検査なしで国境を越えることを許可する協定)の外にあるか、さらにはユーロ圏の外にある地域も多い。経済力や国の大きさ、宗教的色彩、文化的色彩において、EUの中核であるフランスやドイツの事情とは大きく異なっている。
中東欧と他の欧州諸国との「距離感」
とりわけ中東欧地域は、難民の受け入れやウクライナ、ロシア地域との関係をめぐってEUとは異なる態度を取っている。
筆者も一昨年と昨年、バルト三国、ポーランド、チェコ、クロアチア、スロベニアを数回にわたって回る機会を得たが、その印象という点からいえば、中東欧は今、EUの中でフランス、ドイツにやや距離をとりながら、自らの戦略的位置を見直しつつあるといったところであろうか。
2015年から激増した中東やアフリカからの難民をどう受け入れるかをめぐっては、彼らの受け入れを拒否し、徹底した国境封鎖政策をとったのが、この地域であった。右翼政権の誕生や、反民主主義勢力の台頭と報道されるのは、こうした政策のゆえである。
この地域には、EUの中の後背地といった役割が与えられてきた。1人当たりの所得で見ても、ウクライナ、ブルガリア、モルドバ、ルーマニア地域を最底辺として、EUの中の”アフリカ”といった様相を示している。かつてチャーチルが述べた鉄のカーテンは、格差の鉄のカーテンという点で今も健在である。
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