ベオグラードを走る日本のバスが伝えること 知られざる中欧の親日国「セルビア」
その後、2014年5月に発生したセルビアの大洪水に際しては、逆に日本政府からの緊急支援に加え、在日セルビア大使館に連日多額の義援金が寄せられた。
安倍首相訪問の影響は?
1991年のスロべニア、クロアチア、マケドニアの相次ぐ独立後、翌1992年にはボスニア・ヘルツェゴビナがこの動きに続く。残ったセルビアとモンテネグロは、新たにユーゴスラビア連邦共和国を創設し、2003年にセルビア・モンテネグロという国家連合に移行した。その後の2006年のモンテネグロ独立により、およそ100年の時を経て、再び「セルビア」という名を冠するセルビア共和国となった。
ところで、1987年に当時の中曽根首相がユーゴスラビアを訪問したことはあったが、セルビア共和国となってからは、今年1月の安倍首相のベオグラード訪問が日本の首相としては初の訪問となった。その際、セルビアに戻り対応したというグリシッチ大使は、「今回の訪問はセルビアにとって歴史的訪問だと認識しており、今後の両国の文化的・経済的関係を発展させていくうえでのターニングポイントとなる」とする。
というのは、これまでセルビアへの日系企業による直接投資はJTI(日本タバコ・インターナショナル)、パナソニック電工などの企業が進出しているものの、ほかの中欧・東欧諸国と比べて活発とはいえない状況だった。しかし、「ここ4~5年は経済交流が活発となり、2014年には経団連の代表団のセルビア訪問もあった。また、自動車部品メーカーの矢崎総業が、昨年9月に現地法人の開所式を行い、これにはヴチッチ大統領も臨席した」(グリシッチ大使)。今後、同社では2019年末までに1700人の雇用が創出される予定(矢崎総業)という。
今回の安倍首相訪問では、ヴチッチ大統領との首脳会談に続き、随行した日本企業関係者も同席する拡大首脳会合と夕食会も開催された。グリシッチ大使は、「これを機に日本企業のセルビアへの投資が活性化することを期待する」といい、自動車メーカーや自動車部品メーカーをはじめとする日本企業に対し、
「旧ユーゴ時代、セルビアではザスタヴァというメーカーがイタリアのフィアットの車を製造していた。1990年代に関係が途絶えたが、2012年にフィアットがセルビア中部のクラグイェヴァツに新工場を開所し、500Lという車種を製造している。このセルビア産のフィアットはローマ法王が2015年の訪米中に使用した。さらに、セルビアにはタイヤメーカーのミシュランが進出しており、隣国のハンガリーには日本のスズキの工場がある」
と、セルビアを含む中欧地域の工業製品を製造するうえでの潜在力の高さをアピールする。
ちなみに、直近でセルビアへの進出を予定している企業としては、冷凍・冷蔵技術の前川製作所が、すでに用地買収を完了しているという。
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