中野:ほらね、わからないではないですが、どんどん拡大解釈されているように思えませんか。女性に「髪切ったんだ」って言うのがセクハラだとしたら、男性が男性に同じことを言ったとき、セクハラに問えるのかどうか。
藤野:まあ、確かに男性が男性に「髪切ったんだね」って言ったとしても、その場合はセクハラに問われるリスクは低いのかもしれません。
中野:おかしいでしょ。もし女性に対して男性が普通に「髪切ったんだね」と言ったとしても、そのどこに性的関心があるのでしょうか。単に髪を切っているからそう言っただけですよ。それって、自意識過剰なのでは。
他人に嫌な思いをさせていないかどうかを考えるべき
藤野:でも、常識は時代の流れによって変わっていくものだから、セクハラの定義も、徐々に変わっていくのかもしれません。
中野:それはわかりますよ。福田前事務次官の発言は明らかにセクハラですし、それは批判されるべきことですが、ハラスメント全般について言えば、30数種類もあるというのは明らかにゆきすぎです。それは組織の行動を制限する方向に作用するものであり、経済的には何のメリットにもならないと思います。
しかも、セクハラって、男性が女性に行うものというイメージが強いのですが、逆だってありますよね。香水の匂いがきつい女性が「あのおじさん、加齢臭がきつくない?」なんて発言は、立派なセクハラです。「おばさん」という言い方をセクハラだと批判するのなら、「おじさん」という呼称だって、立派なセクハラでしょう。でも、そんなことを言っていたらキリがないし、事態はエスカレートする一方です。何というか、世の中全体的に寛容性が失われているような気がします。
渋澤:ハラスメントって「嫌がらせ」の意味でしょ。昔、親に言われましたよね。「自分がされて嫌だと思うことを人にしてはいけない」って。ハラスメントの種類が30以上もあるなどと言うと、ハラスメントは自由な行動を制限するものだと考えてしまいがちですが、種類には大した意味がなくて、自分の発言、行動が他人に嫌な思いをさせていないかどうかを、きちんと考えるべきなのでしょうね。
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