「待機児童ゼロ」は、どうして難攻不落なのか

保育園「安すぎる認可保育料」という根本問題

認可保育料が安すぎることにこそ大きな問題がある(写真:tkc-taka / PIXTA)

夫婦というのは、年数を重ねる中でそれなりに関係が変化していくものだが、我が家の場合、いまもお互い変わらずに抱いている感情がある。ときめき? まさか。いまや恋は遠い日の花火である。いまも夫婦で変わらずに思っていること。それは、ぼくらは「戦友」であるということだ。

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夫婦にとっての戦いとは、子育てである。具体的に言えば、2人の子どもが小学校にあがるまでの延べ10年間に及ぶ保育園生活だ。あの怒涛の日々の記憶はいまとなっては切れ切れだが、なぜか保育園がらみのことだけは鮮明におぼえている。大雪の日に、自宅から遠く離れた保育園まで我が子を抱えて歩いたこと。朝、病児保育の施設を懸命に探す妻の姿。迎えの時間をとっくに過ぎてしまい、駅から保育園まで息を切らせながら猛ダッシュしたこと。あの頃は、毎日が必死だった。

それでも保育園が決まっていればまだいい。大変なのは受け入れ先がない場合だ。我が家も選考に漏れて途方に暮れたことがあるし、保育所を転々としたこともある。何があっても対応できるようにと妻はフルタイムの仕事をあきらめ、パートタイムの仕事に就かざるを得なかった。

研究者による当事者ノンフィクション

経済学者、待機児童ゼロに挑む』鈴木亘(新潮社)も、切実な体験談から始まる。夫婦そろって研究者の鈴木家の子どもは3人。5歳ずつ離れているため、16年もの長きにわたる保育生活を送ったという。しかも全員が少なくとも1回は待機児童を経験しているというから、ご夫妻の苦労は察するに余りある。

本書はみずからも待機児童問題に苦しめられたことがある経済学者が、行政の最前線でこの問題と格闘した経験を記した当事者ノンフィクションだ。問題解決のヒントが多数示されている上に、小池都政の興味深い内側も明かされている。読んで面白く、実践的なアイデアもあふれた一冊だ。

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