経営不振「ギブソン」はどこまでヤバいのか 経営破綻で失われるものは大きい
カルロス・サンタナもかつては、ギブソンのギターで1つの音を長く長く奏でていた(その後、ポール・リード・スミスのギターに変えたが)。ジミー・ペイジはイーグルスのジョー・ウォルシュからギブソンのギターを譲り受けて使っていたし、愛用のギブソンのレスポールを「私の愛人にして妻」と呼んでいた。ペイジが弾くダブルネックのギブソンは、きゃしゃな体格の彼には支えられないのではと思うくらいに重そうだった。
ジミ・ヘンドリクスはフェンダーのストラトキャスターを愛用していたことで知られるが、ギブソンのフライングV(史上最高クラスに目立つギターだ)も弾いていた。そしてエドワード・ヴァン・ヘイレンもギブソンを使っていた。
ギブソンはもはや単なる企業ではない
映画『スパイナル・タップ』も忘れてはならない。ロックミュージシャンを追うドキュメンタリーの形式で作られたこの映画ほど、ギブソンのギターへの崇拝の念が描かれた作品はないだろう。
主人公のナイジェル・タフネルは、1959年型の日に焼けたレスポール・スタンダードを高く掲げてコンサートツアーを開始する。
「こいつは最高だ。そのことに疑いの余地はない」とタフネルは言い切る。「完璧だ。1959年型」。
ギブソン愛を語る『スパイナル・タップ』の台詞はまだまだ続く。実際筆者も編集者がやんわりと止めるまでやってみせた。言いたいことはわかると思う。ギブソンはただの企業を超えた、公共の財産とも言える存在なのだ。
ギブソンは経営破綻に瀕していた1986年にジャスキビッツら投資家グループによって買収された。経営立て直しの名人として知られたジャスキビッツはゼネラル・モーターズの元技術者で、ハーバード大学経営大学院時代にはバンドを組んでギターを弾いていた(やっていたのはほぼロックンロールで、パーティざんまいだった。映画『アニマル・ハウス』みたいなものだ』)。