経営不振「ギブソン」はどこまでヤバいのか 経営破綻で失われるものは大きい
米楽器大手ギブソン(本社テネシー州ナッシュビル)の破産法申請が近いとのうさわが流れて久しい。ギブソンは年間売り上げが12億ドル超なのにもかかわらず、負債額は5億ドルを上回る。すでにその頭上にはハゲタカが舞っている。大口の債権者には、大手投資会社のコールバーグ・クラビス・ロバーツ(KKR)やブラックストーンといった顔ぶれが並ぶ。
ギブソンの抱える「病」を診断するのはそう簡単ではない。ヘンリー・ジャスキビッツ最高経営責任者(CEO)は多角化によりギブソンを「音楽ライフスタイル企業」、つまりギターだけでなく、ヘッドフォンやハイファイオーディオ機器も扱う企業へと変身させたいと願っていた。2014年にはフィリップスの家庭用AV機器部門を高額で買収したが、以来、ユーロ安が悩みの種だ。
経営破綻した場合に失われるものは
あるインタビューでジャスキビッツは、この買収がうまくいかなかったことを率直に認めている。
「すばらしい決断だったとは言いがたい」とジャスキビッツは述べた。「あまりいい結果を出していない。それなりに理にかなった決断ではあったと思うが、結果としては非常にまずい決断だった。そして決断したのは私自身だった」。
話を先に進める前に、まずはギブソンという会社の歴史を振り返ってみよう。経営破綻した場合に失われるものがいかに大きいかわかるはずだ。
スミソニアン協会の博物館で展示されているチャック・ベリー愛用のギター「メイベリーン」はギブソン製だったし、ロックバンド「ブラック・サバス」のトニー・アイオミが弾いているのもギブソンSGだ。「ガンズ・アンド・ローゼズ」のスラッシュはギブソンの「グローバル・ブランド・アンバサダー」を務めている。