経営不振「ギブソン」はどこまでヤバいのか 経営破綻で失われるものは大きい
ジャスキビッツはギブソンの業績を一度は立て直した。だが近年は思うに任せない状態が続いている。2011年にはインドとマダガスカルから木材を違法に輸入したとして工場や事務所が司法省の捜索を受けた。ジャスキビッツは政府のやりすぎを激しく批判、右派の喝采を受けるとともに、当時のバラク・オバマ大統領の招きに応じて米議会で演説を行った。だが翌年、ギブソンは罰金30万ドルを支払うとともに環境保全のための5万ドルを寄付することに同意した。
ジャスキビッツはまた、ギターのハイテク化を推進し、自動チューニング機能を持つ製品を世に出した。もっとも昔からのファンの反応は散々で、「ジャーニー」のニール・ショーンは「クソみたいなロボット」だと文句を言った。
お手本はあの「ナイキ」
ジャスキビッツに言わせれば自動チューニングは「偉大なテクノロジー」であり、いつの日かすべてのギターがこうした機能を持つようになるとの考えだった。だがその後、自動チューニング機能の製品が増えることはなく、批判の声に負けたと彼は言った。
彼はこうも述べた。「急ぎすぎたかもしれない点は後悔している」。
それでもジャスキビッツは、エピフォンやクレイマーといったギターの廉価ブランドも含む多角化のビジョンには今もこだわっている。お手本となったのはスポーツ用品大手のナイキだ。「ナイキもそうだが、陸上選手だけを相手にしていては商売が成り立たない。普通の消費者にも売らなければ」と考えたのだと言う。
たしかに多角化すべきだという言い分はわからないでもない。ミュージック・トレード誌によれば、ギターの売り上げは回復基調にはあるものの、金融危機以前のピーク時には届いていない。
ジャスキビッツでさえ将来に不安を抱いている。「昔と違って今時の若い子には選択肢がたくさんある」と彼は言う。それに今の時代には、ギターを弾くヒーローが存在しない。ジャスティン・ビーバーはアコースティックギターをつま弾くことはあるけれど、かっこいいカッティング奏法は聞かせてくれない。