男性はすぐ上司に事の顛末(てんまつ)を話し、自分にできることにはすぐ取りかかり、できないことについては上司に指示・判断を仰ぎました。その結果、問題は無事解決し、翌日から通常通り仕事にかかれました。
男性は彼らに文句を言わないどころか、「お騒がせしました」とぺこりと頭を下げたそうです。嫌がらせをした人も、動揺を見せなかった男性を認めざるを得なかったはずです。
もし、男性が感情的になろうものなら、嫌がらせをした白い羊たちは男性を「自分たちの敵」「あの人、歯向かってきた」と見なし、攻撃をますますヒートアップさせていたかもしれません。
男性が白い羊たちのネガティブな行為を上手にスルーし、敵意を見せなかったからこそ、トラブルを最小化できたといえます。
全体への同調より個人の尊重を大切に
黒い羊の出現により、白い羊たちは自分たちの心やプライドが傷つくことを恐れています。そんな彼らに正面から受け入れてもらおうとあれこれ練るよりも、「彼らは傷つきやすい人たちである」「自分は彼らを脅かす存在ではない」ことを理解した上で、彼らがどうしたら安心していられるかを考えて対処した方がいいのではないでしょうか。
普段、カウンセリングを行う筆者は時々、学校や職場で自らが作ったキャラを他人にいじられ、悩み苦しむケースの相談を受けます。こうしたケースの場合、自分の居場所づくりのためのキャラ立てではなく、「相手を刺激しないためのわきまえ」として日々の振る舞いを考えることが、自身の安全と心地よさにつながります。
社会的な事件が起こると、ネットユーザーが犯人を捜して攻撃し、炎上するという昨今の現象がありますが、それも「黒い羊効果」と同じ根を持つ行動のようでもあり、学校で起こるいじめ問題にも通じる危うさを感じさせます。
同質性の高い日本社会では、全体への同調が美徳とされる傾向があります。せめて新しい職場や環境においては、その場を構成する人員それぞれを一人の人間として認め、尊重する感覚を大切にしたいものです。
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