――20代の頃の中島さんが「怖い」と思った先生たちも、中島さんに同じことを感じていたかもしれませんね(笑)。話は変わりますが、名古屋と言えば派手婚で全国的に知られています。現在はいかがですか。
紅白幕のトラックで嫁入り道具を運ぶ光景はすっかり見なくなりました。若い人はドレスを3回着替えてプールサイドで風船を飛ばすような結婚式をやりたがりますが、晩婚化の影響で本当の意味での高級志向が強まっています。仕立てのよいドレスを1点だけ着て、選び抜いた食材でおいしい料理を出したり。自分が目立ちたいのではなく、おもてなしをしたいのですね。
ヘアメイクへの要求も高くなっているのを感じます。昔は「よくわからないので任せます」と言われ、メイクや髪型もワンパターンで許されました。今は『ゼクシィ』のヘアメイク失敗例などを熟読して研究していますから、「作り込みすぎないでください」などと求められます。
「技術さえあれば誰でもいい時代」は終わった
――「自然な感じ」が実はいちばん難しいですよね。
技術さえあれば誰でもいい時代は終わったのだと思います。お客さんが求めているものを瞬時に見極めて、工夫しながら実現する力が必要ですね。気に入らないヘアメイクはすぐ「チェンジ」される時代です。式場からも「こだわりの強い花嫁さんなので、できるヘアメイクさんをお願いします」と注文されることが増えてきました。
リハーサルの2時間でお客さんと仲良くなって信頼してもらわなければ、仕事に結び付きません。私の場合、お客さんと出会った時点から服装などを観察し始めます。ブランド物で身を固めた人と「リラックマ」のぬいぐるみを抱えた人では、求めている対応やヘアメイクが全然違いますから。笑いを求めている人には、自分をおとしめてでも笑いを提供します。
いろいろしゃべりながら、お客さんが求めているスタイルを引き出してあげるのです。どこかに必ず大当たりのポイントがあります。今までヘアメイクをやってきて、最後までポイントがわからなかったお客さんは数えるほどしかいませんよ。
――若い世代のヘアメイクに伝えていきたいことは何ですか。
「かゆいところに手が届くヘアメイクさんになりなさいよ」と伝えています。私たちは人が喜ぶ姿を見るのがうれしいから、この仕事に就いたはず。お客さんに喜んでもらえるようにできるかぎりのことをしてあげたい。暑そうだったら扇子であおいであげて、ドレスの胸元がカパカパしていたら両面テープ、ドレスが汚れたらシミ抜き、虫に刺されたらムヒ……。道具入れにはドラえもんのポケットみたいにいろいろ入れておきなさいと、言っています。5年間で1度しか使わないものでも、その1度のために入れておくべきなのです。対応力の高いスタッフを育てたいな、と思っています。
無料会員登録はこちら
ログインはこちら