「技術さえあれば誰でもいい時代」は終わった 名古屋のスゴ腕ヘアメイク

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――営業は平気でできるようになりましたか?

最初の頃は、(結婚式の)件数が少ないレストランを1件持っていただけでした。私と若いスタッフの2人で十分。事務所も自宅を兼ねていました。でも、ほかのレストランからも仕事を頼まれるようになり、大安の土曜日だったりすると仕事が重なります。以前にお世話になった着付けの先生に「誰かヘアメイクを紹介してください!」とお願いしたりして、いろんな人に助けてもらいながら、なんとかやってきました。

ヘッドスパサロンも経営

営業先の式場に「お店がある人にお願いしたい」と、信用力のなさを理由に断られたこともあります。私はリラクゼーションにも興味があるので、ヘッドスパサロンもやることにしました。今、2店舗です。会社組織にもしました。事務所や駐車場の家賃、スタッフの給料も含めると出ていくおカネも大きいですよ。仕事を取って来ないと成り立ちません。『ゼクシィ』を見て片っ端からテレアポしていた時期もあります。「ヘアメイクさん、決まっているとは思っているんですど……」「ああ、うちは決まっているから。ごめんね」という繰り返しです。

――営業力を増すためにハコやヒトを増やし、そのためにさらに営業しなければならない。ほかの職種にも当てはまりそうなジレンマですね。会社がうまく回るようになったきっかけは何ですか。

市役所で受付をしていた時代に、資格学校に通っていた話はしましたよね? そのときの同級生が岐阜県にあるレストランのウエディングプランナーをしていることを聞きつけて、電話をしたのです。私のことなんてほとんど覚えていなかったと思いますが、「今度、結婚して辞めるヘアメイクさんがいるので代わりに来ませんか?」と言ってもらいました。タイミングがよかったんですね。そのレストランは結婚式の件数が多いだけじゃなくて、割合がよかったのがすごく助かりました。

――割合とは、中島さんの取り分のことですか?

はい。一般論ですが、ヘアメイク代が5万円としても式場が半分取ると残り2万5000円ですよね。担当したスタッフに2万円渡すとして、会社に残るのは5000円です。そのレストランは割合が良心的なので、ほかの式場での2件分が1件の結婚式で稼げました。店舗を増やすたびに私たちの仕事も増えていき、今では1日に8件の式を手掛けることもあります。

――中島さんご自身も現場に出ているんですよね?

私は昨年から件数を減らしています。私が現場に出てしまうと、ほかの担当者にトラブルがあったときに対応できません。今でも週末に電話があると胃が痛くなりますよ。何かあれば、最終的には私がフォローしなければいけませんから。 自分でも年齢的に「ヘアメイクさん」ではなくなってきたな、と感じています。お客さんに年齢を伝えたりはしませんけれど、私が花嫁さんより明らかに年上なので要望を言いにくいことがあったら申し訳ないですよね。

――僕が花嫁だったらぜひ中島さんにお願いしたいですけれどね。気持ちよく話せるし、プロ意識が高いので。若くてキレイなだけであいさつもできないようなヘアメイクさんは避けたいです。

うちもゆとり世代の教育には苦労しています。「ヘアメイクをやりたい」と言って入ってきているのに、情熱がちっとも伝わってこない。笑顔がない、気が利かない、あいさつができない。お客さんからの電話でも「あ、お世話になっています……」と抑揚のない声で応対しちゃう。「そのしゃべり方で仕事を振りたいと思ってもらえるの!?」としかっています。仕事を任せても、「交通費は出ますか」「何時に終わりますか」「安い仕事は嫌です」と条件ばかり平気で聞いてくる。そんな気持ちでヘアメイクはできませんよ。世代の違いを感じます。

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