大学は職業訓練校ではないと割り切るべきだ スキルの取得には「課外活動」が重要

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英語教育の重要さや、英語ができる人材の確保が叫ばれてはや数十年が経とうとしていますが、大多数が数年の英語教育を受けているはずの日本において、いまだに日本人の英語力が向上したという話を聞きませんから、そもそも英語ができるようになることを求めて大学に通うという前提自体に無理があるのです。

大学とは職業訓練校ではありません。そう割り切るべきです。本来はそういった側面をもう少し持っているべきであると考えますが、現状がそうでない以上は、大学に通うことの利点をほかに見いだし、社会に出て通用するスキルの取得は大学外に求めるべきです。

たとえば、さまざまな勉強を通じてやりたいことや興味のあることを見つける場とするとか、勉強をするクセをつける、一般的な教養を身に付ける、自分の視野を広げる場とするなど、大学に通うことでしかできないことも多々あります。

一方で、繰り返しですが職業訓練の場は外に求めるべきですし、実際に私は独学ではありましたが、そのように割り切って大学在学中にさまざまな勉強や経験を積んできました。

そのような前提で考えますと、大学というハコだけ変わっても何の意味もありません。

大学名にかかわらない武器を手に入れる

結局はAbeさんの考えの実現には外の予備校なりに通ったりする「課外活動」が重要になってくるわけですから、むしろ考えるべきはどういった分野で課外活動をするかではないでしょうか。

かくいう私自身も、一流大学の学生ですら予備校に通っている現実や、英語のできない人材を量産する大学教育の限界や、やりたいことがわからないと平然と言う学生たちを見て、自分ならではの武器を手に入れるべく大学1年生から早くも課外活動を開始していたものです。

たとえば英語は前述のとおり一流大学出身者でもできないという意味で、学校のレベルによる差別化が存在しない対象ですから、自分次第で大学名にかかわらない武器を手に入れる可能性の高い対象なのです。つまり、どの大学に通っているかよりも、どんな課外活動をしたかで勝負が決まる分野なのです。

ほかにもそういった分野は多くありますから、Abeさんもどこで戦うかを考える際にはそういった課外活動による差別化が利く分野という視点で考えるのも一考です。

参考までに申し上げますと、私個人はやりたいことが明確であるならば大学名ではなく、学部で選んだほうがよいと思っています。有名な大学よりも、学びたい分野の学部に特出した教授がいるとか、そういった視点で選ぶのがよいと思います。

なぜならば、大学名なんぞ社会に出て数年もすれば正直自分の価値を証明するものにはなりえませんから、それならば自分のものになる知識を学べる学部という単位を優先したほうがよいと思うからです。

いずれにしても、転職にしても転学にしても、「何か」を求めてやってみても何も変わりません。明確な目的があってはじめて、そういった行為は意味を成しうるのです。決して反対ではありません。

学校や会社というハコだけ変わっても、自分が変わらないと意味がないからです。

Abeさんがやりたいことを明確にされ、課外活動による差別化を図り、将来にわたって通用する知識なりを手に入れることを応援しております。

安井 元康 『非学歴エリート』著者

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やすい もとやす / Motoyasu Yasui

MCJ社長兼最高執行責任者(COO)。アニメーションの企画・制作を手掛けるベンチャー企業を経て、MCJにて東証への上場を経験。その後、経営共創基盤にて戦略コンサルタントして9年間活躍し、2016年3月にMCJに復帰。著書に学歴コンプレックスに悩みながらも独自の方法でキャリアを切り開いてきた様子を描いた『非学歴エリート』(飛鳥新社)や、自分ならではの人生を生きる術を描いた『極端のすすめ』(草思社)等がある。

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