「北朝鮮への経済制裁」現地で見えた真の影響

現地エコノミストが明かす変化と経済の展望

科学技術分野について言うと、この分野での経済的活動において、必要な部品だが「買えばいい」と考えていたものまで、経済制裁による制限を受けるようになった。たとえば、火力発電所で使われる、発電を調整するような装置の開発・製造・保守などに制限を受けている。装置を作ろうと思えば作ることはできなくはないが、これまで外部からの輸入で済むだろうと考え、そのようなものまで作る計画ではなかったものだ。

――李教授はこれまで、北朝鮮の経済統計について「米国と対立関係にあるため、最新のものは公表できない」と言ってきた。今回、公表できる新たな統計はあるか。

:統計は、やはり米国との対立関係を考慮して公表できない。ただ、2015年の穀物生産量は589万トンで、それまで多かった1980年代の水準を超えたことは現段階で言える。

1人当たりGDPは、2013年1013ドル、2014年1054ドルで、2015年以降は開示できない。ただ、2015年のGDP成長率は7.5%成長で、2010年代からはほぼ7~8%台の成長を続けている。

人民経済での主体化、現代化

――2017年の北朝鮮経済はどうだったか。

:多くの分野で成果はあった。まず、核武力が完成したこと。これにより、経済成長のための努力を安全な環境でじっくりと行えるようになった。

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次に、人民経済での主体化、現代化とともに、経済部門全般で物質的・技術的土台が強化された。金属工業分野の主体化が進み、製造段階でコークスや重油を使わなくて済むようになった。たとえば、「酸素熱法溶鉱炉」が完成したことが象徴的な成果だ。

化学工業では、窒素肥料を国内で生産・供給できる体制が整った。2018年12月には完全に生産を進めることができる。また、合成繊維分野で成果もあった。C1(一酸化炭素、二酸化炭素、メタン、メタノールなど炭素数1の化合物の製法、またはこれらを原料とした有機化合物の合成法を利用した)工業を行う体制も用意した。

228ビナロン企業所では、苛性ソーダ生産工場を大規模に行うようになった。軽工業でも新製品が増えた。平壌化粧品工場や柳京靴工場がその代表例だ。自国の原料による軽工業生産の改善・現代化が進んだ。機械工業では新型トラクターやトラックが生産できるようになった。

電力工業では発電能力が増強された。新たな発電所も建設(数十万キロワット)された。北倉火力発電所など、火力発電の能力も向上した(北倉火力発電所)。また2017年5月には、最大規模の瑞山水力発電所が2017年5月に着工された。石炭で先進的な能力と技術で生産量が増えたことが、火力発電の能力を向上させるきっかけともなった。

平壌・黎明通り(記者撮影)

科学技術分野でもさまざまな工夫を元に、多くの新技術が開発された。先端科学技術でも、たとえばセキュリティ分野でのプログラム操作システムやブロック暗号の開発なども成果を上げた。

水産分野でも、鱈の養殖技術の基礎を作った。水産業における統合資産システムを開発した。また、養殖システムも開発された。

建設分野では環境を意識した、いわば「グリーン建設」をスローガンに、平壌・黎明通りなどエネルギー節約型による建設がなされた。

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