今も忘れられない、上司の一言
瀧本:会社が大きく変化する中で、筒井さん自身はどんな仕事をされてきたのですか? 大学は理系ですね。もともとケミカルのバックグラウンドですか?
筒井:いいえ、私は機械工学科ですので、同級生は、IHI、三菱重工、日立といった会社に行きました。ただ僕はそういう路線ではないことがわかっていましたので、さあどこへ行こうかと迷っていたときにJTに出会い、就職を決めました。
瀧本:JTのどこに引かれたのですか?
筒井:学生時代に、ビジネスのまね事みたいなことをしていて、最後に手掛けたのが、バーの経営を同級生と2人でお手伝いする仕事です。小さなバーですけれども、オーナーから「君らは元気がよさそうだから、バーを経営してみないか」と誘われて、実際にやってみたらとても楽しかった。
1年後には、バーの業績が少しずつ上向いてきて、こういうふうに店を変えたいというアイデアも浮かんだのですが、設備投資するおカネがなくてそれもできない。そのときに「思ったことを実現するには、けっこうおカネがいるもんだな」と実感しました。バーは恵比寿にあったので、場所柄、起業家のお客さんも多く、就職の誘いも受けたのですが、「いや、大企業に行きます」と断って、JTに入社することにしました。
瀧本:「多角化」するJTの中で、新規事業を手掛けたいと思ったのですか。
筒井:おっしゃるとおりです。私は多角化事業のメンバーになると思っていたのですが、配属を聞いて正直びっくりしました。配属先は、たばこの製造部門でしたから。小田原のたばこ製造工場で、4年間ほど生産管理の仕事をやりました。どこのラインで何をいつまでに造るかを管理するのが主な仕事です。
300人ほどの職場でしたけども、多種多様なモチベーションで仕事をする人がいることに驚きました。そうした職場で成果を出すのは、大変でしたし、非常に学びの多い4年間でした。
特に印象的だったのは、1年目に出会った上司です。
当時の私は、抱いていた就職後のイメージと大きく異なった配属だったこともあり、モチベーションが上がらず、不満を述べることも多々ありました。そんなときにその上司から「お前は、ああだこうだ不満を言うけど、ならどうしたいんだ。それをちゃんと言えないんだったら、お前の不満は意味がない」と切って捨てられました。その上司の一言は、今でも財産として僕の中に残っています。
瀧本:僕はよく、ダメな会社を見破るいちばんいい方法は、その会社の近くの居酒屋に行くことだと言っています。そこで、社員が大挙して愚痴を言っていたら、その会社は終わりが近い。
筒井:人がたくさん集まれば、愚痴を言いたくなるのはわかりますが、仕事の根幹のところで愚痴を言っていると、よくないですね。
僕が後輩に、「いろいろ主張するのは自由だけど、主張するからには、責任をしっかり果たす覚悟でやろう」とよく言っています。勉強もいっぱいして、自分の主張がいかに効果的かも考え、今の仕組みがまずいのであれば、その仕組みのまずさを指摘し、そのうえで、ソリューションを提供するという流れがあって、初めて主張していいのだと思います。夜に酒を飲みながら場末の居酒屋で不満を垂れ流すよりも、同じだけのエネルギーをよりよい未来を創造することに使ったら、必ず成果は出るはずです。
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