「低学力の生徒にこそeラーニングが必要だ」 すららネット社長ロングインタビュー

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小林:塾や学校としては、純粋にこの教材が優れているから使っているということなのですね。

湯野川:おっしゃるとおりです。とはいえ、教材を販売すればそれで終わりではなく、最初の研修はきちんとやりますし、全国配信のウェブ会員システムで定期勉強会など、しっかりとアフターフォローを行っています。ただし、私のこれまでの教訓から、あえてフランチャイズ方式にはしていません。

小林:それは、どういった教訓なのでしょうか?

湯野川:数々のフランチャイズに関わってきて痛感しているのは、業種業態を問わず寄せられるクレームは同じだということ。契約した後になって、「契約前に聞いた話とは全然違う」という声が出てくるのです。

小林:いったい、どんなところが違っているというクレームの声が出るのですか?

湯野川:多くの場合、加盟検討者は、契約前の営業担当者の話を聞くと加盟後はバラ色の世界が待っているような印象を持ってしまいます。たとえその説明に嘘偽りがなくても、契約後に対峙する現実とのトーンの違いに違和感を覚えるわけです。フランチャイズを販売する側としては、特に加盟店舗数が少ないうちは加盟金が主たる収益源となるだけに、ノルマを課して加盟獲得を推進します。そうすると、どうしても営業担当者はバラ色トーンで語りがちになってしまいます。こうした教訓から、当社では加盟金を一切いただいていません。また、基本的に営業をした担当がその後のフォローも担当します。したがって、当社の営業担当者は下手にオーバートークをすると、後で、自分で自分のクビを絞めるハメになるので、営業時点ではできるだけ控えめに説明をして後で喜んでもらおうとします。ただし、このビジネスモデルには致命的な欠点がありまして、加盟金をいただかないものですから、最初はなかなか儲かりません(笑)。

儲かりにくいけれどお客様の成功と目線が一致する

小林:つまり、このサービスを導入する側としては、イニシャルコストはかからずランニングコストのみを負担していくということになるのですか?

湯野川:ええ。塾の場合、固定的に1校当たり3万〜5万5000円の月額固定費と、生徒1人当たり1500円程度を頂戴しています。

小林:そうしますと、生徒が増えていかないとビジネス的には成り立ってこないというわけですね。

湯野川:そうですね。導入塾さんが生徒をたくさん獲得して継続してもらうことで、初めて当社は儲かるようになります。儲かりにくいけれどお客様の成功と目線が一致するので、長い目で見ればこちらのビジネスモデルのほうがいいと考えました。

小林:確かに長期戦にはなるけれど、理に叶っていますね。加盟店方式だと誘発されがちなモラルハザードも起きにくい。

湯野川:もう一つ、現場においてコンサルティング的なサービスを展開しているところも当社の大きな特徴ですね。eラーニングは非常にわかりやすい商品なのですが、実は表面からは見えにくい困難な点もあって、それが大きな落とし穴となっています。低学力の子どもたちは学習習慣が身についていませんから、いかに優秀なeラーニング教材であってもなかなかログインしてもらえません。良いものを提供すれば広がるかというとそうでもなくて、やはり学校や塾という先生が見守る空間が重要だと考えています。実際、当初はB to Cのビジネスとして参入してきた競合他社が途中でB to Bに方針を転換なんてこともありました。

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