「低学力の生徒にこそeラーニングが必要だ」 すららネット社長ロングインタビュー

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湯野川:そのとおりです。実は、我々がターゲットとしているマーケットは大変なブルーオーシャンなのです。既存の教育ビジネスは、もっぱら裕福な家庭の子どもをいい学校に入れることにフォーカスしています。一方、低偏差値で学習の習慣がなかなか身につかない子どもにきちんと指導するのは大変なことで、教える側にとってはやっかいな存在でした。しかし、そういった子どもを持つご家庭も、どうにかしてもっと学力をアップさせられないものかと困っています。勉強のできる子どもたちはすでにいずれかの進学塾に通っていますし、学校においても特進クラスのような仕組みも設けられています。ところが、学力の低い子をフォローする仕組みは世の中にほとんど存在せず、個別指導の補習塾がその受け皿となることが期待されたものの、先程も述べたように講師の教務品質の安定化という面では十分と言えず、学力の向上につなげられずにいました。だから、当初はブランド力のない補習塾でしたが、我々のeラーニングを使った個別学習を行うことで、授業の質は安定化し、それまで“塾難民”だった近辺の低学力の子どもたちが一気に集まってきたわけです。

小林:完全に低学力の生徒に狙いを定めた教材となっているのですか? それとも、もっと汎用性があるのでしょうか?

湯野川:偏差値60台の生徒にも対応しており、大学のセンター入試に出てくるような学習内容もカバーしています。だから最近では、大手進学塾や名門私立学校などにも導入が進んでいます。もっとも、そういった市場はレッドオーシャンで競合が熾烈化しているのが現実です。それに対し、偏差値30〜40台は完全なブルーオーシャンとなっています。

あえてフランチャイズ方式は採用せず

小林:御社が特に力を入れて開拓しているのは、そういったことに課題意識を抱いてきた既存の補習塾なのでしょうか? それとも、新規に補習塾を開業しようとしているところですか?

湯野川:既存塾と新規開業は半々か、新規開業のほうが若干多いぐらいのバランスですね。新規開業については、ベンチャーリンク時代に一貫して携わってきたフランチャイズ方式をあえて用いていません。なぜなら、塾というビジネスは、開業してから1〜2年程度も経てば、以後はさほど本部に頼らなくても結構自分たちで経営できてしまうものだからです。外食ビジネスであればフランチャイズの本部に新メニューを開発してもらったりするかたちで依存している部分が出てくるでしょうが、塾の場合は、極端な話、書店で参考書を買ってきて教えればいい。

小林:確かにそのとおりですね。外食のような仕入れも特に発生しませんし。

湯野川:フランチャイズ契約というものは、2〜3年で契約を解約できるようになっていても、その後2年間は同じビジネスを行えないという制約がほとんどの場合設けられていることが多く、現実的にはなかなか足抜けが叶わない。結局は、「ロイヤリティがもったいないな」と不満を抱きながらフランチャイズを続けている“不満集団”になりがちです。だから、加盟店の人間が集まると本部への悪口合戦になってしまう本部が少なからずあるのだと思います。こうしたことを踏まえて、すららネットではあえて加盟金とロイヤリティを頂戴せず、単に「すらら」というサービスの提供の対価のみをいただき、もし満足いただけないなら1年後には自由にやめられるようにしました。

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