パナ津賀社長が考える35事業部制のさばき方 「未知なる世界に中のリソースでは不十分」

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津賀:新しい価値創出をイノベーションと呼ぶならば、社内的にイノベーションを起こしてもらう。できることは、パナソニックのリソースを使いながら、パナソニックの社内ではできなかった(できそうにない)イノベーションに関しては、社外のリソースを活用していく、という位置づけです。中国ではいろいろなイノベーションが起こっていますが、社内のリソースを使ったイノベーションは起こっていない。「中小企業の集合体」が持つリソースを使えば、どのようなイノベーションが起こるかが、社員の好奇心です。

「俺たちはなんだったんだ」といった声は少ないです。樋口泰行(前・日本マイクロソフト会長)、馬場渉(前・独SAPAGバイスプレジデント)、片山栄一(前・メリルリンチ日本証券調査部長・アナリスト)は社内で歓迎されています。圧倒的に好意的な声のほうが多い。

右肩上がりのときは、優秀な人であったとしても、外から連れてくる人事政策に対して否定的な声が出たかもしれませんが、今では、このままだと会社が縮小していくという危機感のほうが大きい。チームプレイの中で社外から来た人の知恵と中の人の知恵を掛け合わせることで、この危機的局面を何とか打開していきたい、という希望のほうが勝っていると思います。

昔のビジネスモデルは崩れつつある

35年後の会社を予見できますか? 予見できない。未知なる世界に対して、自分たちは立ち向かっていかなくてはならない。そのための手段として、中のリソースだけでやるということを正当化する理由はどこにもない。新入社員をたくさんとって、定年まで働き続けて、その中でスキルを磨いていくという昔の人事政策および日本の大企業のビジネスモデルは崩れつつあります。そういう時代だからこそ補う手立てが必要。それが、今、やっていることなのです。

技術だけでなく、ビジネスの構図、そのベースとなる一般の人々の価値観が変わろうとしています。モノを所有しないという価値観などは、以前とまったく違う。家、車をはじめ、豊かになるためにものを所有するという価値観は今や昔のもの。今は、子供に留学させるなど教育におカネを使う。所有をベースにしたわれわれの事業は、国によっては古くなる。そこで、年配の人々向けのビジネスモデルにとどまることなく、新しい世代向けに新たなビジネスモデルを構築しないとつじつまが合わなくなってしまう。

しかし、日本などの先進国では、比較的年配の価値観である所有も、新興国へ行けば商品所有することで豊かな暮らしをしたいという人は多いのです。そこで、海外のそのような国々では、所有するという価値観に対応したビジネスモデルを展開し、お役立ちの輪を広げるようにしています。

長田 貴仁 経営学者、経営評論家

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おさだ たかひと / Takahito Osada

経営学者(神戸大学博士)、ジャーナリスト、経営評論家、岡山商科大学大学客員教授。同志社大学卒業後、プレジデント社入社。早稲田大学大学院を経て神戸大学で博士(経営学)を取得。ニューヨーク駐在記者、ビジネス誌『プレジデント』副編集長・主任編集委員、神戸大学大学院経営学研究科准教授、岡山商科大学教授(経営学部長)、流通科学大学特任教授、事業構想大学院大学客員教授などを経て現職。日本大学大学院、明治学院大学大学院、多摩大学大学院などのMBAでも社会人を教えた。神戸大学MBA「加護野忠男論文賞」審査委員。

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