人材確保のカギは、「面接」と「育成」にある 「新規採用」の繰り返しは現場の疲弊を招く

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面接の時点で自社の求める人材を見極めていく必要があります。よって、採用は、外注ではなく社員が、直接会って感じることができる「内製化」が大切なのです。

「人間関係」の教育は必須

次に大切なのは、人材育成です。採用してからの教育、既存社員の教育が継続的に必要です。職務における知識やスキルももちろん必要ですが、離職やメンタル不全の一番の理由は「人間関係」。よって、人間関係改善や構築のための教育は何よりも必須事項となりますが、実際は、ここを見落としがちです。

なぜなら、コミュニケーションは現場でのやり取りの中で育まれるという認識があるからです。しかし、多くの問題は、現場ですでに起こっています。コミュニケーション能力はなかなか数値化できず、すぐに結果が見えないので、後回しになりがちですが、そこに取り組んでいくことで、職場環境は改善され、最終的には、人材確保に最も有効な手段となります。

実際に私がかかわってきた企業も、「信頼される聞き方」「伝わる伝え方」そして「ストレスマネジメント」を全社員向けに行っていくと、メンタル不全者ゼロに達するところもあり、離職者軽減に大いに役立っています。

よく、外部研修に人事担当者のみを送り、持ち帰って自社で研修内容を伝達する方法を取っている組織も見られますが、本人の復習にはなっても、確実に内容を理解していないかぎり、それをさらに伝えていくことは不可能に近く、効果は限りなく薄いと言えます。また、管理者だけが知識を得ていても、スキルが高くても、意識レベルが違えば相手には伝わりません。

必要なのは、社員全員が同じように取り組むことです。たとえば、管理職だけがハラスメント研修を受けても、その知識が部下にないためにハラスメントでもなんでもないことで「ハラスメント」と訴えてくることがしばしばあるのです。ハラスメントではなく、単なるコミュニケーション不全と思われる相談のケースは、後を絶ちません。しかし、単なるコミュニケーション不全も数を重ねれば、上司からは「使えない部下」、部下からは「パワハラ上司」と認識され、本格的なハラスメントに移行していくことは否定できません。

組織は指示命令系統で動くので、「指導」や「指示・命令」は必要です。そしてお互いが共通の認識を得ることは最も大切なことです。階層により時間や回数などのボリュームは違っても、全社員が共通認識を得るためには、同じ内容の社内研修を行うことが重要なのです。

大野 萌子 日本メンタルアップ支援機構 代表理事

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おおの もえこ / Moeko Ohno

法政大学卒。一般社団法人日本メンタルアップ支援機構(メンタルアップマネージャ資格認定機関)代表理事、産業カウンセラー、2級キャリアコンサルティング技能士。企業内健康管理室カウンセラーとしての長年の現場経験を生かした、人間関係改善に必須のコミュニケーション、ストレスマネジメントなどの分野を得意とする。現在は防衛省、文部科学省などの官公庁をはじめ、大手企業、大学、医療機関などで年間120件以上の講演・研修を行い、机上の空論ではない「生きたメンタルヘルス対策」を提供している。著書に『よけいなひと言を好かれるセリフに変える言いかえ図鑑』(サンマーク出版)がある。

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