小売りの世界ではインターネットの発達がアマゾンドットコムなどの巨大IT企業を台頭させると同時に、ついに雇用を脅かし始めています。
製造業は10~20年先を見据えたモノ作りを進行
しかし、製造業の世界では今後10年先~20年先を見据えて、人工知能(AI)を備えた機械(ロボット)を導入することで、生産性を飛躍的に向上させる「新しいモノづくり」を目指しています。目下のところ、世界の大手製造業は試行錯誤を繰り返しながら、新しい工場での実験に取り組んでいます。
具体的にどういった取り組みがなされているのかというと、各工場で生産する製品の素材や部品が近づくと、AIを備えた機械がICチップの情報を読み取って必要な工程を指示し、生産設備を最適のラインに組み替えようとするのです。工場のラインに人がいなくても、コンピュータでつながった機械同士が会話をして、その時々の最適な生産ラインをつくりだすというわけです。
たとえば、自動車の製造工場の場合は、次のようなイメージで捉えてみるといいでしょう。車体の骨格を溶接しているロボット同士が「お互いこう動いたほうが、組み立て時間をもっと短縮できるよね」と会話して実行に移している。一方、塗装するロボットは、他の工場からデータを取り寄せ、「こうすればより美しい塗装になる」と学習している。さらにラインを管理するコンピュータが「こういう工程に改善すれば、消費電力がより少なくなる」と全ロボットに指示を出す、という具合です。
各々の工場から集まる膨大な情報をもとに、AIを備えた機械が新しいアイデアをひねり出し、できるだけ早く、できるだけ安く製造する工程を考えて提案し続けているのです。その結果として、生産性が加速度的に高まっていき、競争力を大幅に引き上げることができるというわけです。
このような背景には、ゼネラル・エレクトリック(GE)のジェフリー・イメルトCEO(当時)が2010年時点で産業分野でのインターネットの活用に着手したという戦略があります。航空機エンジンや医療機器に通信機能付きセンサーを組み込むことで、インターネット経由で収集した膨大なデータ(ビッグデータ)をAIが解析し、製品が壊れる直前に修理する究極のアフターサービスを確立したうえに、製品の開発・改良にかける時間を削減することで生産性の引き上げにも成功していたのです。
無料会員登録はこちら
ログインはこちら