こうして連絡もこなくなり、いつしか関係も終わった。そして、つい最近、その男性が数年前に結婚したことを、風の便りで知った。
「お子さんも生まれたみたいで、家族を築いているらしいです。職場の先輩たちも結婚して、今小学生になるお子さんが2人いるんですね」
ここまで言うと、「ふぅ」と一呼吸置いて続けた。
「なんだか私だけ置いてけぼりで、気づけば恋愛不適合者になっていた。結局、『親が、親が』って言いながら、そこに引っ張られていたのは自分だったんですよね。この年になってそれに気づくなんて、自分が嫌になります。情けない」
毒母と娘の関係は、実は共依存だ
ずっと束縛、監視をされてきた人生。そんなふうに思ってきたけれど、それを断ち切れなかったのは、実は自分。毒母と娘の関係は、実は共依存だ。
「ここで何かを変えたい。今動かなければ、母が死ぬまで母の顔色をうかがって生きる人生になる気がするんです」
子は母から生まれる。育ててくれた親を大切にしなければならないと思うのは当然のことだろう。しかし、母によって自分が苦しめられているのなら、ここで自分と母を分離する。互いが自立していくことが、互いの幸せではないだろうか。
「まずは、お母さんとあなたの人生を分けて考えてみましょうね。お母さんを切り離すことに罪悪感を感じなくていいのよ」
その手始めとして、月に2回事務所に来てもらい、面談をし、これまで感じてきた矛盾、怒り、切り離せなかった罪悪感を吐き出してもらうことにした。また毒母について書かれた書物やネット記事を、手当たり次第読むことを勧めた。
「ここでは思いのたけを話してね。思い切り泣いてもいいのよ」
私がこう言うと、容子は初めて口元をゆるめて少し笑った。
「今、私以外の女の人が、みんなまぶしく見えるんですね。新しい化粧品が出たとか、こんな服を買ったとか、誰々のコンサートに行ったとか、楽しそうでキラキラ輝いている。私は生き方を間違えた。でも、ここから抜け出して変わりたい。結婚もしたい。私、結婚、できますか?」
変わりたい! そう思ったときが人生の元年だ。結婚したい! その気持ちこそが、ご縁をひきつけるのだ。
「ええ、変われるように、結婚できるように、一緒にがんばっていこうね」
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